不動産の基礎知識 住宅取得日記

住宅取得日記

第1回:
 ここに家が立つ
挿絵
地鎮祭
 夏まっさかり、生まれたばかりの息子を連れて無事、産科病院を退院し、向かったのは新居となる土地だった。
そう、これからここに、私たちの家を建てるんだ。
その日が、ささやかな地鎮祭の日だった。
思えば、着工まで長かった。
土地を探し始めたのが前年の秋で、それから二十ヶ所は土地を見てまわっただろうか。
その中から納得の出来る土地をようやく決め、不動産業者を通じて話を進めたものの、契約の直前で売り主側が売却額や条件変更を言ってきて、キャンセルされたこともあった。
そのときは、ローンを組む予定の銀行から促され、建設費用の裏付けとなるよう、建物の建築確認申請も出したし、工事の見積もりも工務店に頼んで出してもらったのに。
とにかく、やっと土地が決まり、契約の手続きが完了したのが春。
それから着工までに、さらに数ヶ月を要するとは、思ってもみなかった。
でもここから先、スムーズに家は建つのだろうか?などとは、かけらも思わなかった。
結城家はお気楽なのだ。

結城家・家づくりのポイント
 やっぱり土地を買って家を建てるとなると、担保になる建物もまだなく、ましてや頭金もない人間には、銀行もキビシイ。
中古物件や建売物件なら、すぐにでも融資できると何度言われたことか。
私は何度かくじけそうになって、オットに

「もう、中古住宅にしとこうよ。中身だけリフォームすればいいじゃない。」

と言ってみたりもしたが、そこは人生すべて、こだわりを持って生きてきた彼のこと、首を縦に振るはずもなかった。
 
 こだわりと言えば、オットは着るもの、食べるものにもうるさいが、たとえばクルマの趣味にしても、二十代の頃から一貫して、外車しか乗らないオトコなのだ。
ただし“外車"というと聞こえはいいが、生まれも育ちも庶民なので高級車に乗れるはずもなく、出会った頃に乗っていたのは二十年落ちのドイツ車だった。
そのクルマは、しょっちゅうエンストするのはなんとかなるとしても、バッテリーが上がってJAFのお世話になることも日常で、終電がなくなってから動かなくなり、帰れなくなって外泊を余儀なくされたこともあった。
その次に乗ったイギリス車は新車だったがクーラーがなく、小さいうえにひどく揺れて、助手席の乗り心地も最悪だった。
その次のフランス車は故障が絶えず、年間の修理代は相当なもので、軽自動車なら一台新車が買えるくらい費やした。
今の二代目フランス車こそ、なんとか機能的な問題もなく動いてくれているが、興味のないひとがみたら、『国産車と何が違うの?』と言うであろう控えめな外見のくせに、価格はやはり外車、そこそこの値段したのだからハラが立つ。  イラスト


なぜオットがそんなにまで不便な思いをし、安くない対価を支払ってまで外車にこだわるのか?
これが、彼の生き方であり、ポリシーなのです。
当然のことながら家づくりにおいても、このポリシーはまっすぐまっすぐ、貫かれたのだった。
そのこだわりとは、

『しっかりとしたコンセプトのもとにデザインされ、つくられたものであること』。

確かに、国産車も国産家電メーカー品も、消費者に迎合して、コンセプトそっちのけで利便性とか機能性に走りすぎてるキライはあるけどね〜。(最近やっと、国産のなかでもホネのある商品が出てきたように思いますが。)
国産のものは、優等生でおもしろみはないけど、でも故障も少ないし、経済的で優秀なのにね 〜。

 この『便利』『機能的』かつ『経済的』の対極を行く我が家の生き方こそ、今言われているもう一つの豊かな暮らしかた、“スローライフ・都会版"ではないのかっ?!おおっ。
と、半ば強引に自分を納得させるワタシなのでした。
かと言って、家の建築にかける予算はとても厳しく....。

こうして、オットとワタシの、“こだわりの"ドタバタ家づくりは、前途多難な中で、始まった。
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