■ 着工さて結城邸建設予定地の半分を占めていたイヌ牧場の柵は取り払われ、いよいよというかようやくというか、とにかく工事が始まった。
基礎工事にはちょうど季節も良く、掘削・捨てコンクリート流し・型枠・配筋・コンクリート注入、と工事は順調に進んだ。
そして骨組みの柱や梁も運ばれてきて立ち上がり、無事上棟となった。
現場監督のHさんはこの道数十年のベテランで、真面目を絵に描いたような人だったので私たちは信頼し、仕事を任せることが出来た。
ただ、がっちりとして安全・快適な建物をつくることには長けているHさんだが、デザイン面に関しては専門外のため、資料をたくさん用意して説明し、現場での要所要所のチェックもこちらで入念にする必要があった。
けれども美しいデザインやおさまりに固執すれば、その分職人さんの手間も増え、ひいては予算オーバーとなる。予算をオーバーせずに、なおかつ洗練されたおさまりになるようにと、Hさんの顔色を窺いながら、オットは何度も現場に足を運んでは、打ち合わせを重ねた。
そんな中、監督のHさんから、一階の床には断熱材を入れた方がいいですよ、とアドバイスされた。

一階は事務所なので、病院の床などに使用されるリノリウムという床材を敷いて予算を抑えることにしていたが、コンクリートベタ基礎に、均しモルタルをほどこした上に直接リノリウムを貼ると、冬はしんしんと寒くて辛いですよ、と聞かされたのだ。
他人の住む家はそれなりの数を手掛けてきた私たちだが、もちろん今まで、いくらローコストの家といえどもそんな無茶な方法で予算を抑えた経験はなく、『やっぱりダメか...。』と、がっくり肩を落とした。
あえなく、床下の断熱材の費用が、追加で発生することになった。