 
■「高齢化社会」から「高齢社会」へ 日本は未曾有の時代を迎える
「宙に浮いた年金記録」…昨年はこの問題が様々な物議を醸し出しました。中には年金不信に陥った方もいらっしゃるでしょう。しかし、よくよく考えてみると社会保険庁による年金記録方法がずさんであったこととは別に、そもそも国民皆年金の制度設計をつかさどる「人口の推移予測」自体に問題があったことが、公的年金制度を揺るがす諸悪の根源であるように思えてなりません。国民年金(基礎年金)の主要財源は、被保険者の保険料および国庫負担を原資としています。現役世代が負担する保険料で高齢者世代を支えるという「世代間扶養」の考え方に基づき成り立っているわけです。
ところが、近年、年金制度がスタートした時には想像できなかった早さで高齢化が進でしまい、予想だにしなかった“スピード”に給付水準が追いつかない状況になりました。年金システムが制度疲労を起こしたわけです。そのスピードはかなりの早さのようで、厚生労働白書(平成17年)には以下のような説明(表現)がなされています。

さらに、白書には「今後とも高齢化が急速に進んでいくことが見込まれる」とも記されており、長寿大国日本の到来は時間の問題と言えそうです。ちなみに、昨年の敬老の日(2007年9月15日)現在、65歳以上の高齢者人口は2744万人、総人口に占める割合は22%でした。高齢者の住宅ローン需要が高まることは間違いないでしょう。
そこで、高齢者ニーズに応えるべく、シニア世代特有の資金計画が求められることになりますが、その際、年齢の「壁」を克服できるかが勝敗の別れ道となります。というのも、住宅ローンには年齢制限があり、条件をクリアできないと門前払いになるからです。仮に年齢制限をクリアできても、今度は、完済年齢の関係で長期間にわたる返済期間を選べないこともあります(【表1】参照)。借入期間が短くなれば、当然、毎月の返済額増を余儀なくされ、場合によっては借入額を減らさざるを得ないケースも想定されることになります。十分な資金繰りを妨げることになるのです。
【表1】借入れ時の年齢と借入期間の関係
借入時の年齢(歳) |
35 |
40 |
45 |
50 |
55 |
60 |
65 |
70 |
最長借入期間(年) |
35 |
35 |
35 |
30 |
25 |
20 |
15 |
10 |
完済時の年齢(歳) |
70 |
75 |
80 |
80 |
80 |
80 |
80 |
80 |
※ほとんどの金融機関が完済年齢を80歳としている
しかし、落胆することはありません。こうしたハードルを解消してくれるのが「親子リレー返済」です。親子リレー返済とは、一定の条件を満たす子供がローンの後継者として支払いを引き継ぐ返済方法。いわば、二世帯にまたがる住宅ローンです。この返済方法を利用すると、「申込み本人」(親御さん)ではなく「後継者」(通常はご子息)の借入れ申込み時年齢をもとに返済期間を計算できます。そのため、申し込み本人が高齢であっても長期の借入れ期間が確保できるようになり、返済期間の制限から解放されることになるのです。
■80歳を過ぎると、団信からは脱退しなければならなくなる
しかし、気を付けなければならない点もあります。親子リレー返済を利用した際の団体信用生命保険(団信)の保障期間については注意が必要です。以下、フラット35を利用した場合の団信(いわゆる「機構団信」)を題材に、留意点を補足しておきます。
本来、機構団信の保障期間は申込み本人が満80歳になるまでと決められています。そのため、申し込み本人が返済中に満80歳を過ぎると、既加入の団信を脱退しなければならなりません。ご存じ、団信は万が一の際、ローン残債を弁済する頼もしい保険です。それだけに、脱退はその分のリスクを負うことになります。そこで、機構団信ではこうした事態を回避すべく、申込み本人が団信を脱退した際には、後継者が途中から加入できるよう取り計らいがなされています。加入は任意ですが、「安心を買う」意味では入っておいた方がベターでしょう。
今後、日本の長寿命化はさらに進むことが想定されます。親子リレー返済の「出番」が、ますます増えることは間違いないでしょう。
【表2】フラット35 親子リレー返済の後継者の要件
申込み本人との関係 |
申込み本人の子供あるいはその配偶者で、定期的な収入のある方 |
申込み時の年齢 |
借り入れ申込み時の年齢が70歳未満 |
同 居 |
申込み本人と融資住宅に同居すること。ただし、将来同居を予定している場合も可能(※) |
連帯債務者 |
後継者は必ず連帯債務者となる |
フラット35を利用していないこと |
後継者は親子リレー返済の申し込み時、フラット35を利用していないことが条件となる。ただし、将来同居する時までに完済することが可能であれば、将来同居予定の後継者は当面の返済を継続することができる。 |
共有持ち分 |
後継者も融資住宅を共有することができる。親子リレー返済では持ち分制限につき「申し込み本人と後継者それぞれの持ち分を合計して2分の1以上」になるよう決められている。そのため、後継者単独で過半数を保有することも可能になる。ただし、将来同居の後継者については、従来通り、持ち分は単独で2分の1以下としなければならない。 |
※住宅金融支援機構
※注) 将来同居の後継者については、金融機関によっては取り扱いがない(後継者になれない)場合がある。お心当たりの方は事前に要確認。
文提供:平賀 功一(住宅コンサルタント)
|