この記事では、新築3,000万円を目安に固定資産税をシミュレーションしていきます。計算方法や適用できる軽減措置を参考に、自身の固定資産税もシミュレーションできるようにしましょう。
新築3,000万円の住宅の固定資産税はいくらか
固定資産税とは、毎年1月1日時点の不動産の所有者に課せられる税金のことをいいます。不動産に対して毎年課税されるので、家を購入する場合はランニングコストとして固定資産税が毎年どれくらい掛かるのかを把握しておく必要があるのです。
固定資産税は、土地・建物それぞれに課せられます。それぞれの評価額に応じて税金がかかってくるため、同じ3,000万円であっても土地と建物の割合に応じて固定資産税は違ってくるのです。
今回は、一般的な戸建てを想定し、以下の条件で固定資産税を算出してみましょう。
土地の購入費用:1,000万円
建物の建築費用:2,000万円
建物の床面積:30坪
固定資産税率1.4%(標準税率)
なお、土地・建物の評価額は購入費用の70%として計算していきます。
土地の固定資産税:(1,000万円×70%)×1/6×1.4%=約1万6,334円
建物の固定資産税評価額:(2,000万円×70%)×1/2×1.4%=9万8,000円
よって、土地・建物合わせて約11.4万円の固定資産税がかかってくるのです。
土地・建物は面積や購入年度・住宅性能によって軽減措置を適用できます。上記の例では、土地には「小規模用土地の軽減措置」、建物では「新築住宅の軽減措置」を適用しています。
詳しい計算方法を以下で確認していきましょう。
新築住宅の固定資産税の計算方法
固定資産税の計算方法は、以下の通りです。
固定資産税額 = 固定資産税評価額(土地・建物) × 1.4%(標準課税)
固定資産税は、土地と建物の固定資産税評価額に税率を乗じることで算出できます。税率は多くの自治体で1.4%に設定されていますが、自治体によっては異なる場合もあるのでお住まいの自治体の税率を確認するようにしましょう。
固定資産税は、固定資産税評価額さえ分かれば自分でも簡単に算出できるものです。具体的には、次の手順で算出します。
- 1.土地と建物の固定資産税評価額を確認する
- 2.土地と建物の固定資産税評価額に税率を掛ける
- 3.土地と建物の固定資産税額を合算する
➀土地と建物の固定資産税評価額を確認する
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する基準となる価格のことをいいます。
すでに固定資産税を納めている場合、毎年送付される納税通知書に添付されている課税明細書や自治体の役所で固定資産課税台帳を閲覧することなどで固定資産税評価額を調べることが可能です。
また、これから新築する場合は、時価と建築費用を目安に算出できます。土地の場合は、国土交通省が発表する公示価格の70%、建物は建築費用の50~70%が目安となるのです。
土地の固定資産税評価額 = 公示価格×70%
建物の固定資産税評価額 = 建築費用×50~70%
例えば、以下の条件の固定資産税評価額の目安を算出してみましょう。
土地の購入費用:1,000万円
建物の建築費用:2,000万円
上記の場合の固定資産税評価額は、以下の通りです。
土地の固定資産税評価額は1,000万円×70%=700万円
建物の固定資産税評価額は2,000万円×70%=1,400万円
②土地と建物の固定資産税評価額に税率を掛ける
固定資産税評価額が算出できれば、税率を乗じることでそれぞれの固定資産税が求められます。
固定資産税=固定資産税評価額×1.4%(標準課税)
税率は、国が目安と定める税率が1.4%です。ただし、自治体ごとに設定されているため、1.4%以外の自治体もある点には注意しましょう。
お住まいの自治体の税率が分かれば、土地と建物の固定資産税評価額に税率を乗じて算出します。ここでは、①の条件に対し税率1.4%で計算していきましょう。
土地の固定資産税額 = 700万円×1.4%=9万8,000円
建物の固定資産税額 =1,400万円×1.4%=19万6,000円
③土地と建物の固定資産税額を合算する
実際の納税するのは土地と建物の固定資産税を合算した額になります。上記①②の例の場合、固定資産税合計は以下の通りです。
新築住宅の固定資産税額 =9万8,000円+19万6,000円=29万4,000円
上記の場合、毎年約30万円の固定資産税が課せられます。固定資産税は1月1日時点の所有者に対して、その年の5~6月頃に納税通知書が送られてきます。新築住宅の場合は、1月2日以降に完成した場合は、翌年から固定資産税が発生するので注意しましょう。
ただ、上記の固定資産税は軽減措置を適用していない場合の計算です。住宅の場合は軽減措置を適用できるケースがほとんどのため、上記の金額よりも大きく抑えられるでしょう。
以下では、新築住宅で適用できる軽減措置について見ていきます。
新築住宅の固定資産税の軽減措置
固定資産税は、取得年度や面積・住宅製のなどによってさまざまな軽減措置を適用できます。新築住宅の場合、2024年3月31日までに建築された住宅には、次のような軽減措置が設けられています。
種類 | 減額される割合 | 減額される年数 | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
一戸建て | 50% | 3年間 | |||||||||||||||
マンション | 50% | 5年間 | |||||||||||||||
認定長期優良住宅(一戸建て) | 50% | 5年間 | |||||||||||||||
認定長期優良住宅(マンション) | 50% | 7年間 |
参照:国土交通省|新築住宅に係る税額の減額措置
新築住宅の場合、戸建てなら固定資産税が3年間2分の1、マンションであれば7年間2分の1に減額されます。ただし、適用には専用住宅で床面積50㎡以上280㎡以下、マンションでは専有部分と共有部分の持ち分面積の合計が50㎡以上280㎡以下などの要件があるので注意しましょう。
さらに、国土交通省が定めた長期優良住宅の基準を満たし「長期優良住宅」と認定されれば、減額期間が戸建てで5年、マンションで7年に延長されるのです。
また、土地に対しても減税措置が適用できます。居住用の建物が建設されている土地については、面積に応じて以下の減額措置を適用できるのです。
適用面積 | 軽減率 | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 評価額の1/6 | |||||||||||||||
一般住宅用地 | 200㎡超えの部分 | 評価額の1/3 |
上記2つの軽減措置を適用した場合の固定資産税を計算してみましょう。なお、土地と建物の条件は先述した①で計算していきます。
土地の購入費用:1,000万円(固定資産税評価額700万円)
建物の建築費用:2,000万円(固定資産税評価額1,400万円)
建物の床面積:30坪(約99㎡)
固定資産税率1.4%(標準税率)
土地の固定資産税=(700万円×1/6)×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×1/2)×1.4%=9万8,000円
よって固定資産税合計は114,300円となり、軽減措置を適用する前の固定資産税が29.4万円だったのに対し、大幅に軽減できているのです。
新築3,000万円の住宅の固定資産税をシミュレーション
固定資産税は、一度決まった税額がずっと続くわけではありません。固定資産税評価額は3年に1度評価替えされるため、地価の上昇などで固定資産税も変動する可能性があります。
また、新築住宅の軽減措置は適用期間が決まっているため、期間終了後には軽減適用前の金額に戻ります。さらに、建物にかかる固定資産税は、経年劣化を考慮した「経年減点補正率」を乗じて計算するので、年々評価額が下がっていくという特徴もあります。
経年減点補正率は以下の通りです。
経過年数 | 経年減点補正率 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1年 | 0.80 | ||||||||||
2年 | 0.75 | ||||||||||
3年 | 0.70 | ||||||||||
4年 | 0.67 | ||||||||||
5年 | 0.64 | ||||||||||
10年 | 0.50 | ||||||||||
15年 | 0.37 | ||||||||||
20年 | 0.25 | ||||||||||
25年 | 0.21 | ||||||||||
27年以上 | 0.20 |
特に、新築住宅の軽減措置適用期間後には、固定資産税が大幅に上昇するため、購入後1年目だけでなく4年目以降の固定資産税の額を把握しておくことが重要になるのです。
ここでは、3000万円で購入した住宅の1年目・4年目・10年目・20年目の固定資産税を戸建て・マンションでそれぞれシミュレーションして確認していきましょう。
1年目の場合
まずは、1年目の固定資産税を計算していきます。
【一戸建て】
戸建住宅の条件は以下の通りです。
- ・土地の購入費用:1,000万円(固定資産税評価額700万円)
- ・建物の購入費用:2,000万円(固定資産税評価額1400万円)
- ・建物の床面積:30坪
- ・固定資産税率:1.4%(標準税率)
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=1,400万円×1/2×1.4%=9万8,000円
固定資産税=1万6,300円+9万8,000円=11万4,300円
土地は小規模住宅用地の軽減措置を適用し、評価額を6分の1にして税率を乗じます。建物は、新築住宅の軽減措置を適用し評価額を2分の1にして税率を乗じ、求めた土地と建物の固定資産税で合計を求めることが可能です。
【マンション】
新築マンション1年目の固定資産税を計算していきます。マンションの条件は以下の通りです。
- ・土地の購入費用:1,000万円(固定資産税評価額700万円)
- ・建物の購入費用:2,000万円(固定資産税評価額1400万円)
- ・建物の床面積:50坪(約165㎡)
- ・固定資産税率:1.4%(標準税率)
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=1,400万円×1/2×1.4%=9万8,000円
固定資産税=1万6,300円+9万8,000円=11万4,300円
マンションであっても小規模住宅用地の軽減措置、新築住宅の軽減措置を適用できるため、それぞれ軽減を適用したうえで固定資産税を算出します。
4年目の場合
上記の条件で4年目の一戸建てとマンションの固定資産税額をシミュレーションしていきます。
【一戸建て】
戸建4年目の固定資産税は以下の通りです。
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×0.67)×1.4%=13万1,320円
固定資産税=1万6,300円+9万8,000円=14万7,620円
戸建の場合、新築住宅の軽減措置が適用できるのは3年間のため、4年目では軽減措置を適用できません。しかし、建物は経年劣化の分を4年目の経年減点補正率(0.67)を乗じて評価額を求めるので、上記の固定資産税となるのです。
【マンション】
マンション4年目の固定資産税は以下の通りです。
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×0.67)×1/2×1.4%=6万5,660円
固定資産税=1万6,300円+9万8,000円=8万1,960円
マンションの場合、新築住宅の軽減措置を5年間適用でき、さらに経年減点補正率も加わることで評価額を大きく抑えることが可能です。
10年目の場合
10年目の固定資産税を計算していきましょう。
【一戸建て】
戸建の固定資産税は以下のようになります。
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×0.50)×1.4%=9万8,000円
固定資産税=1万6,300円+9万8,000円=14万7,620円
新築の軽減措置は適用できませんが、経年減点補正率(0.50)が加わることで大きく固定資産税を減額できています。
【マンション】
マンションの固定資産税は以下の通りです。
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×0.50)×1.4%=9万8,000円
固定資産税=1万6,300円+9万8,000円=14万7,620円
マンションの新築住宅の軽減措置は5年間となるため10年目では適用できません。しかし、経年減点補正率(0.50)を乗じることで、適用できていた1年目と同額の税負担となるのです。
20年目の場合
最後に20年目の固定資産税を見ていきましょう。
【一戸建て】
戸建の固定資産税は以下の通りです。
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×0.25)×1.4%=4万9,000円
固定資産税=1万6,300円+4万9,000円=6万5,300円
築20年目となると、建物の資産価値が大きく減少します。経年減点補正率が0.25と大きくなるため、固定資産税の負担も大きく減らすことができるのです。
【マンション】
マンションの固定遺産税は以下の通りです。
土地の固定資産税=700万円×1/6×1.4%=1万6,300円(100円未満切り捨て)
建物の固定資産税=(1,400万円×0.25)×1.4%=4万9,000円
固定資産税=1万6,300円+4万9,000円=6万5,300円
戸建同様に、マンションも資産価値が低下していることから固定資産税の負担も大きく減少しています。
ただし、上記のシミュレーションはあくまで目安です。実際の固定資産税は、住宅などによって異なるので購入額などから自分のケースでシミュレーションしてみるとよいでしょう。
まとめ
今回は、新築3,000万円の固定資産税シミュレーションをお伝えしました。同じ3,000万円でも、土地と建物の割合や戸建てかマンションかによっても固定資産税は異なります。計算方法と適用できる軽減措置を理解して、今後の固定資産税を自分でもシミュレーションしてみるとよいでしょう。
固定資産税は新築当初は軽減措置を適用でき大きく減額できますが、適用期間が終了すると元の高い税額に戻ってしまうので注意が必要です。
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