結論から言うと、年収300万円で住宅ローンを借りることは可能で、借入可能額は物件の種類や地域によって異なります。無理のある返済計画で購入した物件を手放す事態を避けるために、自分にとっての妥当な返済額を知っておきましょう。
そこで、本記事では年収300万円での住宅ローンの借入可能額や月々の妥当な返済額について説明します。後半では年収300万円で住宅ローンの審査に通るコツも紹介しているため、物件の購入を検討している年収300万円の方はぜひ参考にしてください。
- 年収300万円で住宅ローンは借りられるか
- 年収300万円での住宅ローンの借入可能額
- 年収300万円での住宅ローンの妥当な返済額
- 年収300万円で住宅ローンの審査に通るコツ
- お得に借りるなら住宅ローン控除の利用がおすすめ
- 「住宅ローンシミュレーション」で試算してみよう
- まとめ
年収300万円で住宅ローンは借りられるか
2022年に独立行政法人住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、全国の住宅ローン利用者の7.0%が年収400万円以下となっています。年収300万円で住宅ローンを借りられることがわかるでしょう。
世帯年収 | 利用者の割合 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
400万円以下 | 7.0 | ||||||||||
400万円超~600万円以下 | 26.5 | ||||||||||
600万円超~800万円以下 | 29.3 | ||||||||||
800万円超~1000万円以下 | 17.9 | ||||||||||
1000万円超~1500万円以下 | 14.5 | ||||||||||
1500万円超 | 4.8 |
参照:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2022年4月調査)」
ちなみに年収300万円でも、借入額によっては頭金なしで住宅ローンを利用できます。しかし、頭金を用意した場合よりも毎月の返済額や利息が増える点に留意しておきましょう。
年収300万円での住宅ローンの借入可能額
住宅ローンの借入可能額は年収と年収倍率によって算出できます。年収倍率とは、年収に対する住宅の購入額の比率であり、計算式は以下の通りです。
これまで年収倍率は5倍程度と言われていましたが、「フラット35」の利用者を対象とした調査によると、年収倍率は年々上昇傾向にあります。
参照:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」
2015年の年収倍率は中古物件で5倍前後、新築物件で6.5倍前後でした。それに対し、2021年では中古物件で5.7~5.8倍、新築物件で6.8~7.5倍となっています。
上記の数値を踏まえると、年収300万円の場合、借入可能額の目安は中古物件で1700万円程度、新築物件で2,000~2,200万円程度です。これらの基準より高い物件を購入したい場合は、頭金を用意して住宅ローンの借入金額を基準値まで下げましょう。
年収300万円での住宅ローンの妥当な返済額
住宅ローンにおいて、無理のない範囲で毎月の返済額を設定することが重要です。妥当な返済額を超えて設定した場合、趣味にお金をかけられなくなるだけではなく、最悪の場合は購入した住宅を手放さなければならないことも。そのため、自分にとっていくらまでが妥当な返済額なのか理解しておきましょう。
住宅ローンの妥当な返済額は返済負担率から算出できます。返済負担率とは、年収に対する年間の返済金額の比率であり、返済額の計算式は以下の通りです。
「フラット35」では申し込み要件として、年収400万円未満の場合における返済負担率の基準を30%以下と設定しています。
返済額は、金利や期間・返済方法によって変動します。金利と返済方法の種類を以下でまとめました。
【金利の種類】
- ・変動金利
借入期間中に金利が変動します。金利が下がると返済額が減少するというメリットに対し、金利が上がると返済額が増加する点がデメリットです。
- ・固定金利
一定期間の間は金利が変動しません。一定期間の金利が確定する点がメリットで、返済期間終了までの返済額が確定しない点がデメリットです。
- ・長期固定金利
借入期間中は金利が変動しません。借入時に返済額の合計が確定する点がメリットで、変動金利よりも金利が高い傾向にある点がデメリットです。
【返済方法の種類】
- ・元利均等
毎月の返済額が一定となっています。返済計画を立てやすいというメリットがある反面、元金均等よりも返済額の合計が高くなる点がデメリットです。
- ・元金均等
毎月の返済額のうち、元金の額が一定となっています。返済が進むにつれて返済額が減少するというメリットがある反面、元利均等よりも返済開始時の返済額が多い点がデメリットです。
借入額1,500万円の場合
年収300万円で1,500万円の借入をおこなう場合の返済額を以下の表にまとめました。固定金利は1.5%、元利均等のローンを組むことを想定しています。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20年 | 867,600円 | 72,300円 | 28.9% | ||||||||||||||||||||
25年 | 718,800円 | 59,900円 | 23.9% | ||||||||||||||||||||
30年 | 620,400円 | 51,700円 | 20.6% | ||||||||||||||||||||
35年 | 550,800円 | 45,900円 | 18.3% |
年収300万円で借入額1,500万円の住宅ローンを組む場合、月々の返済額は返済期間20年で72,300円です。返済負担率は28.9%で、「フラット35」の基準である30%を下回っています。しかし上限の30%に近く、想定外の支出などで家計が圧迫されやすいことから、上記表では25年以上が無理のない範囲の返済といえるでしょう。
完済予定日を定年以降に設定している場合、定年後は定年前のように返済できるとは限りません。定年前で資金に余裕がある場合は先に多めに返済しておくことで、定年後に返済できないというリスクを軽減できます。
借入額1,800万円の場合
完年収300万円で1,800万円の借入をおこなう場合の返済額を以下の表にまとめました。固定金利は1.5%、元利均等のローンを組むことを想定しています。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20年 | 1,041,600円 | 86,800円 | 34.7% | ||||||||||||||||||||
25年 | 862,800円 | 71,900円 | 28.7% | ||||||||||||||||||||
30年 | 745,200円 | 62,100円 | 24.8% | ||||||||||||||||||||
35年 | 661,200円 | 55,100円 | 22.0% |
年収300万円で借入額1,800万円の住宅ローンを組む場合、返済期間が20年では月々の返済額が86,800円、返済負担率は34.7%です。「フラット35」の基準である30%を上回っており、妥当な返済額とは言えません。また、返済期間が25年の場合も上限の30%に近いため、上記表では返済期間30年以上が無理のない範囲の返済といえます。
借入額2,100万円の場合
年収300万円で2,100万円の借入をおこなう場合の返済額を以下の表にまとめました。固定金利は1.5%、元利均等のローンを組むことを想定しています。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20年 | 1,215,600円 | 101,300円 | 40.5% | ||||||||||||||||||||
25年 | 1,006,800円 | 83,900円 | 33.5% | ||||||||||||||||||||
30年 | 868,800円 | 72,400円 | 28.9% | ||||||||||||||||||||
35年 | 770,400円 | 64,200円 | 25.6% |
年収300万円で借入額2,100万円の住宅ローンを組む場合、返済期間が20年では月々の返済額が101,300円、返済負担率は40.5%です。「フラット35」の基準である30%を上回っており、妥当な返済額とは言えません。また、返済期間が30年の場合も上限の30%に近いため、上記表では返済期間35年以上が無理のない範囲の返済といえます。
多くの金融機関で設定されている完済時年齢の上限は80歳です。2,100万円という借入額は、年収300万円で40代の方には借り入れが難しいといえます。
年収300万円で住宅ローンの審査に通るコツ
年収300万円の場合、借入額によっては住宅ローンの審査に落ちる場合があります。頭金の用意や夫婦の共同名義による契約・住宅ローン控除の利用などで審査に通過しやすくなるため、本章でコツを理解しておきましょう。
頭金を用意して借入額を抑える
頭金を用意すると住宅ローンの返済額が少なくなるため、完済する可能性が高いと判断されて審査に通りやすくなります。借入額の減少によって利息を抑えられる点も魅力です。以下の表で頭金がある場合とない場合を比較しました。
実際の借入額 | 年間の返済金額 | 月々の返済金額 | 返済負担率 | ||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
頭金なし | 1,500万円 | 867,600円 | 72,300円 | 28.9% | |||||||||||||||||||||||||
頭金500万円 | 1,000万円 | 578,400円 | 48,200円 | 19.2% |
頭金がない場合は返済負担率が28.9%となっており、「フラット35」の基準である30%に近くなっています。一方、頭金を用意した場合の返済負担率は19.2%であり、無理のない範囲で返済可能です。
頭金を用意する方法には、貯金や家族からの援助、高価なものの売却などが挙げられます。手元のお金をすべて頭金に充ててしまうと生活に困るため、6か月分以上の生活費は残すようにしましょう。
夫婦・親子で共同名義にする
年収300万円の方が夫婦や親子で共同名義にした場合、自分ひとりで申し込むときよりも審査に通りやすくなります。返済負担率を抑えられたり、借り入れできる金額が増加したりする点も共同名義のメリットです。以下で共同名義にした場合としていない場合を比較しました。
名義 | 返済負担率 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
一人(年収300万円) | 40.5% | ||||||||||
二人(年収300万円+年収300万円) | 20.2% |
単独名義の場合は返済負担率が40.5%であり、「フラット35」の基準である30%を大幅に上回っています。それに対し、共同名義の場合の返済負担率は20.2%であり、余裕のある返済計画です。
共同名義にはさまざまなメリットがあるものの、どちらかの収入が減ると返済が難しくなったり、物件の売却時に手間がかかったりするデメリットがあります。離婚時にトラブルになる原因のひとつであるため、デメリットを踏まえたうえで共同名義にするか検討しましょう。
複数の金融機関に相談する
金融機関によって住宅ローンの審査基準は異なっており、ひとつの金融機関の審査に落ちても、他の金融機関の審査には通過する可能性があります。住宅ローンの審査に通過しやすくするのであれば、複数の金融機関に相談して申し込みましょう。
審査に落ちてから他の金融機関の審査に申し込むとなると多くの時間を要してしまうため、複数同時に申し込むことがおすすめです。同時に条件を比較できて、自分にとってもっとも良い条件で借り入れられるというメリットもあります。審査の申し込みには多くの書類を提出する手間がかかるため、同時に申し込む金融機関は3つ程度にとどめておきましょう。
お得に借りるなら住宅ローン控除の利用がおすすめ
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用した際に受けられる所得税の控除です。年末の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除され、所得税では還付しきれなかった部分は住民税から控除されます。支払った所得税と住民税の一部が住宅ローン控除の上限で、最大455万円もの節税が可能です。
住宅ローン控除を利用するためには、新築物件や中古物件ごとに設けられた条件を満たす必要があります。以下は新築物件で住宅ローン控除を受ける場合の条件です。
- ・住宅の引き渡し日または工事の完了日から6か月以内に居住する
- ・自分自身で居住する
- ・控除を受ける年の合計所得額が2,000万円以下である
- ・床面積が50平方メートル以上ある
- ・返済期間が10年以上である
中古物件になると、さらに条件が追加されます。住宅ローン控除の対象になる物件なのか、購入前に確認しておきましょう。
「住宅ローンシミュレーション」で試算してみよう
想定した物件価格をもとに、月々の返済額は、いくらぐらいなのか試算してみましょう。
住宅ローン設定
まとめ
年収300万円の場合、借入可能額の目安は中古物件で1700万円程度、新築物件で2,000~2,200万円程度です。
無理のある返済計画を立てると、購入した物件を手放さなければならなくなる可能性があるため、自分にとっての妥当な返済額を把握しておく必要があります。返済負担率が30%以下になるように返済期間を設定しましょう。
また、頭金を用意したり、夫婦で共同名義にしたりすることで住宅ローンの審査に通過しやすくなります。審査内容は金融機関によって異なっているため、同時に複数の申し込みをおこなって比較することがおすすめです。住宅ローン控除を利用すると最大455万円もの税金が戻ってくるため、物件の購入前に控除対象なのか確認しておきましょう。
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