本記事では、任意売却の基本やメリット・デメリット、任意売却の流れなど分かりやすく解説していきます。
任意売却とは
任意売却とは、債権者の合意を得て住宅を売却する方法のことをいいます。競売を避けるための手段として行うのが一般的です。
任意売却と一般的な売却の違い
任意売却と一般的な売却の大きな違いは、抵当権を抹消しているか・していないかという点です。抵当権とは、金融機関が住宅ローンを貸し出す際に不動産に設定する権利のことをいいます。
金融機関は抵当権を設定することで、万が一、ローンの返済が滞った場合住宅を強制的に売却してローンを回収できるのです。
一般的な売却をする場合、この抵当権は抹消しておかなければそもそも売却できません。仮に、売却できたとしても抵当権が付いたままの物件を買いたいという人はいないでしょう。
抵当権抹消のために必要なことが、「住宅ローンの完済」となります。一般的な売却をするためには、住宅ローンを事前に完済しておくか、売却額で住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があるのです。
対して、任意売却は抵当権が付いたまま売却できる方法となります。抵当権が付いたまま売却するため、抵当権を設定した金融機関の合意を得る必要があるのです。
任意売却と競売の違い
競売とは、住宅ローンが回収できないと判断した場合に金融機関が強制的に住宅を売却することをいいます。金融機関が裁判所に競売の手続きを踏むことで、債務者の意志に関わらず売却できるのです。
競売の場合、法的な手段での売却となるためルールが厳しく定められており、債務者の自由度は低くなります。一方、任意売却は金融機関の合意は必要ですが、法的な手段ではないため売却の自由度が高いという特徴があります。
任意売却のメリット
ここでは、任意売却のメリットを見ていきましょう。メリットとしては、次の5つが挙げられます。
- ・市場価格に近い価格で売却できる可能性がある
- ・所有者の情報を非公開にできる
- ・売却後の残債務の返済計画を立てやすい
- ・引越し費用の一部を負担してもらえる可能性がある
- ・引越し日を調整できる
市場価格に近い価格で売却できる可能性がある
任意売却は、一般的な不動産売却と同様に販売活動が行えます。より多くの購入希望者の目に留まることで、買い手との交渉によっては市場価格に近い価格で売却できる可能性もあるのです。
一方、競売の場合は落札となり一般的には市場価格の7割ほどの価格となります。任意売却も競売同様、売却額をローン返済に充てるものです。
より高値で売却できれば、売却後のローン残債を減らせられるだけでなく、手元にお金を残せる可能性も出てくるでしょう。
所有者の情報を非公開にできる
競売の場合、物件の情報や所有者の情報が新聞などで公開されてしまいます。また、競売のための現況調査などで調査員が頻繁に訪れるなどで近所の人に目撃されやすいものです。
競売にかけられると、物件を競売にかけられていることやローンを滞納していることが外部に知られてしまうというデメリットがあります。
任意売却であれば、一般の売却と変わらないためローンを滞納しているという事実を周囲に知られることはありません。
売却後の残債務の返済計画を立てやすい
任意売却であっても、売却額でローンを完済できなければ、残りのローンは引き続き返済していく必要があります。しかし、任意売却の場合、金融機関と交渉することで無理のない返済プランに変更してもらえる可能性が高いのです。
競売の場合、売却代金で返済できなかった分は一括返済を求められ、対応できなければ自己破産になってしまうケースも珍しくありません。
任意売却であれば、分割での支払いが可能となり交渉によっては毎月の返済額を大きく減らせられるでしょう。
引越し費用を一部負担してもらえる可能性がある
任意売却の場合、金融機関との交渉によっては売却代金から引っ越し費用を捻出することが可能です。ローン返済が滞る経済状況で、引越し費用を自己資金で捻出するのは容易ではありません。
しかし、任意売却であれば引越し費用を売却額から融通してもらえるので、新しい生活をスタートしやすくなるのです。
競売の場合は、引越し費用の捻出は認められていません。
ただし、融通してもらえると言っても金融機関もローン残債を回収したいため、10~20万円が相場となる点には注意しましょう。
引き渡し日を調整できる
売却後の引き渡し日についても、買主・金融機関との交渉によって調整可能です。売却後は新しい住まいの契約などですぐに引越しが難しい場合もあるでしょう。
しかし、競売の場合は売却額が振り込まれ次第早々に明け渡す必要があり、明け渡さずにいる1~2か月ほどで強制退去させられます。
任意売却であれば、ある程度猶予を持たせられるので、スムーズに次の生活に入りやすくなります。
任意売却のデメリット
任意売却にもデメリットがあるため、デメリットについて理解しておくことが大切です。デメリットとしては、次の4つが挙げられます。
- ・住宅ローンの支払いは続く
- ・信用情報に傷がつく
- ・連帯保証人に迷惑をかける可能性がある
- ・個人の判断で売却するかどうか決められない
住宅ローンの支払いは続く
任意売却後に売却額だけではローン完済できない場合は、引き続きローンを支払う必要があります。ローン返済が滞る経済状況で、新しい住居のための費用などを支払ったうえでローンの返済が残っているのは生活の大きな負担となる場合もあるでしょう。
ただし、金融機関との交渉でローンの返済額を大きく減らせる場合もあります。一般的には、3,000円~5,000円程の返済額となるケースも多いため、返済の負担を大きく減らせる可能性もあるのです。
信用情報に傷がつく
信用情報とは、クレジットカードやローンなどの個人のお金の情報のことです。住宅ローンは「返済が61日以上または3回目の支払日を超えた延滞」で信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリスト状態になります。任意売却をする時点では、すでにブラックリストに掲載されています。
一度個人信用情報に傷がついてしまうと、その情報は延滞が解消されても5~10年は記録が残ります。そのため、別の住宅ローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることは難しくなるでしょう。
ただし、情報抹消後はまたローンを組める可能性もあります。
連帯保証人に迷惑をかける可能性がある
任意売却するには、金融機関だけでなく連帯保証人の同意も必要です。また、任意売却後のローン残債の額が大きい場合、連帯保証人に支払い義務が発生する場合もあります。
事前に、任意売却する旨は連帯保証人の同意を得ておくようにしましょう。
個人の判断では売却するかどうか決められない
任意売却は金融機関の合意が必要です。そのため、金融機関の基準を満たす必要があり、場合によっては任意売却の合意を得られない可能性もあります。
合意を得やすくするには、明確な返済プランの提示などが必要になるでしょう。
任意売却の流れ
ここでは、任意売却の流れを見ていきましょう。一般の売却であれば、買い手が現れるまでいつまでも売却を続けることが可能ですが、任意売却にはタイムリミットがあります。
タイムリミットを過ぎてしまうと競売になってしまうため、スケジュールはしっかりと把握しておくことが大切です。
任意売却の大まかな流れは、次の通りです。
- 1.金融機関からの督促(延滞から1~3ヶ月)
- 2.現状把握(延滞から6~8ヵ月)
- 3.不動産会社の選定(必要期間1~3ヵ月程)
- 4.債権者への確認(必要期間1~3ヵ月程)
- 5.任意売却の手続き・売却開始(必要期間1~3ヵ月程)
- 6.契約締結(必要期間1か月程)
- 7.所有権の移行(必要期間1か月程)
- 8.残債の確認・返済(必要期間1か月程)
それぞれ解説します。
①金融機関からの督促
住宅ローンの返済が滞ると、最初に金融機関から電話や通知が届きます。連絡を放置していると、3か月ほどで督促状や催告書が送付されるのです。
特に、催告書は最後通知の役割を果たします。催告書には、期限の利益を喪失ことや法的手続きに入る旨が記載されており、内容証明郵便で送付されるのが一般的です。
催告書や督促状に従わずにいると、保証会社がローン残債を代位弁済します。代位弁済後、債権は保証会社に移り保証会社から一括請求を受け対応できなければ、競売に手続き入られるのです。
金融機関からの通知の時点ではまだ、競売を防げる可能性があります。返済が厳しくなった時点で金融機関に相談することで、返済計画を見直せる可能性があるので早めに手を打つようにしましょう。
②現状把握
任意売却する場合、まず不動産の売却額やローン残債の現状を把握する必要があります。金融機関や専門家・不動産会社に相談しながら現状を把握していくようにしましょう。
③不動産会社の選定
任意売却を依頼する不動産会社を選定します。ただし、任意売却の場合対応している不動産会社が限られている点には注意が必要です。
また、対応している不動産会社でも経験が不足していると、想定よりも安値での売却になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
④債権者への確認
任意売却するには債権者(金融機関)の合意が必要です。債権者に任意売却を認めてもらえるように交渉してきましょう。
不動産会社の査定額や返済プランなどを明確に提示することで、交渉しやすくなります。
⑤任意売却の手続き・売却開始
債権者の合意が得られれば、任意売却をスタートできます。任意売却であっても一般の売却と同じ販売活動となります。
⑥契約締結
買い手が見つかり、条件が一致すれば、売買契約を締結します。売買契約までには、債権者の納得を得ておく必要があります。債権者の合意がなければ、売買契約を締結できないので注意しましょう。
売買活動中から定期的に状況を債権者に報告していると、スムーズに売買契約に進みやすくなります。
⑦所有権の移行
売買契約締結後に、代金の決済と引き渡しが行われます。決済時には、売却代金でローン残債の完済と抵当権抹消が同時に行われ、物件の所有権も買主に移ります。
⑧残債の確認・返済
任意売却後も、住宅ローンの残債が残る場合には返済していく必要があります。具体的な返済額については、金融機関と相談して決めていくことになるでしょう。
なお、残債の返済については、元のローン返済額よりも軽くして貰えるのが一般的で、月額5,000円~3万円程度となることが多くなっています。
上記返済額を前提に、残債を返済するのに必要な期間が設定されることになるのです。
任意売却をスムーズに行うためのポイント
ここでは、任意売却をスムーズに行うためのポイントをご紹介します。
具体的には、「できる限り早く手続きを進めること」と「任意売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶ」という点を押さえておくとよいでしょう。
できる限り早く手続きを進めること
任意売却は、競売が始まるまでに手続きを終わらせなければなりません。そのため、各手続きについてできる限り早く進めることが大切です。特に、最初の金融機関への相談については返済が滞ってからできるだけ早く進めるようにするとよいでしょう。
任意売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶ
任意売却は、不動産売却の流れ自体は通常の不動産売却とほぼ同じやり方で進めることになりますが、意思決定をする際に金融機関の許可を得る必要があります。そのため、実際に過去に任意売却の経験がある、実績豊富な不動産会社を選ぶことが大切です。
任意売却を行う前に検討しておきたいこと
任意売却は、最終的に競売になるのと比べるとさまざまな点でメリットがありますが、ローン滞納後、取れる選択肢には任意売却以外にいくつかの方法があります。
例えば、知人・友人からまとまった資金を借りられるのであれば、お金を借りて完済するといった方法が考えられるでしょう。また、金融機関によっては借り換えや返済方法の変更などの提案を受けられるケースもあります。
任意売却後も残債が残る場合には返済を続けていく必要があることもあり、場合によっては競売を持って自己破産する方法を選ぶという方もいます。
住宅ローン滞納後、どのような選択をすればよいかについては、状況によって異なるものです。迷った場合は、不動産会社や金融機関、弁護士など専門家に相談するようにするとよいでしょう。
任意売却に関するよくある質問
ここでは、任意売却に関するよくある質問をご紹介します。
Q.任意売却の相談先はどこ?
任意売却の相談先としては、以下3つが考えられるでしょう。
- ・不動産会社
- ・金融機関
- ・弁護士(司法書士)
特に、不動産会社や弁護士・司法書士に相談する際には、任意売却の実績がある会社に相談することが大切です。
Q.任意売却をすると自己破産になる?
任意売却をすることで、即自己破産につながるということはありません。ただし、住宅ローンの返済を延滞することになるので、個人信用情報には延滞の情報が登録されることになります。
一定期間はローンの借り入れなどが難しくなることは、覚悟しなければなりません。
Q.任意売却できないことがあるって本当?
任意売却は金融機関の許可を得て行うものなので、金融機関の許可を得ることができなければ、任意売却できません。まずは住宅ローンを融資してくれている、金融機関の許可を得るようにしましょう。
Q.任意売却する際マンションのランニングコストはどうなる?
任意売却中も、マンションのランニングコストは支払っていく必要があります。ローンの返済については、金融機関に相談することで一定期間待ってもらうことができる可能性がありますが、修繕積立金や管理費などは支払っていく必要があるでしょう。
どうしても支払えない場合には、早い段階で管理組合に相談することが大切です。
Q.任意売却で買い手がつかないとどうなる?
任意売却は通常の方法で不動産売却するのとほとんど変わりません。仲介による方法で個人の買主の方を探すことになるので、買主が現れないケースもあるでしょう。
買主が現れないまま、一定期間が経過すると最終的に競売にかけられてしまうケースもある点には注意しなければなりません。
まとめ
任意売却について一般的な売却との違いや競売との違い、具体的な任意売却の流れやメリット・デメリットなどご紹介しました。
任意売却は競売と比べるとさまざまなメリットがあるため、住宅ローンの返済が厳しくなってきたという方はぜひ検討すべきだといえるでしょう。ただし、任意売却は競売が始まるまで、という期限があるため、できるだけ早い段階で進めることが大切です。
任意売却は住宅ローン滞納後に金融機関に相談することで売却を進める手法ですが、その前の段階で家を売却して問題を解消できるのであればそれに越したことはないでしょう。そうしたケースでは、ニフティ不動産の利用がおすすめです。
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