ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

この記事では家の建て方のひとつであるツーバイフォー工法について分かりやすく解説し、どんな家づくりが可能なのかをお伝えしていきます。他の建て方とどう違うのか、どんなメリット・デメリットがあるのか把握できますので、家づくりの参考にしてみてください。



ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)とは

ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

ツーバイフォー工法は木造建築の工法のひとつで、使われる角材が「2インチ×4インチ」であることにちなんだ名称です。建築基準法上でのツーバイフォー工法の名称は「枠組壁工法」ですので、木造枠組壁工法と呼ばれることも。アメリカやカナダの木造住宅は約9割がツーバイフォー工法で建てられていると言われており、世界各国で取り入れられている工法です。

ツーバイフォー工法は、均一サイズの角材を使って箱状の空間を作り、その箱を横に並べたり上に積んだりして家を造っていきます。この構造は「六面体構造」と呼ばれ、外圧を6つの面がバランス良く受け止めることで変形や崩壊を防ぐ効果が。角材を組み合わせていく単純な工法で高度な技術を必要せず、それでいて耐震性・耐風性が高いのがツーバイフォー工法の特徴です。

2019年に内閣府が発表した「森林と生活に関する世論調査」によると、昔ながらの在来工法で建てられた住宅は割合が減少し、ツーバイフォー工法などで建てられた住宅の割合は増加しています。1989年からの10年間で、ツーバイフォー工法などで建てられた住宅は3倍近くに増えており、ツーバイフォー工法への関心が高まっていると言えるでしょう。

ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

出典:内閣府「森林と生活に関する世論調査」(令和元年)

在来工法(木造軸組工法)との違い

日本の木造住宅は、昔から在来工法(木造軸組工法)で建てられてきました。柱や梁、筋交いなどの軸組で建物の荷重を支える工法で、ツーバイフォー工法に比べると設計上の制限が少ないため、自由な間取りでの家づくりが可能です。一方で工法が複雑なため、職人の技術によって耐久性や仕上がりに差が出てくるとも言われています。

他にも、在来工法とツーバイフォー工法には次のような違いがあります。

 
【ツーバイフォー工法と在来工法の比較表】
ツーバイフォー工法 在来工法
建材 壁・床・天井 柱・梁・筋交い
接合部 釘・ネジなど 継手・仕口・補助金物など
開口部 大きくできない 大きくできる
工期 比較的短い 比較的長い
取り扱い業者数 比較的少ない 比較的多い

ツーバイフォー工法で使われる木材のサイズ

ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

住宅の建築に使われる木材(構造材)は、厚みと幅の違いで種類が分かれます。ツーバイフォー工法で使う構造材は「2×4材」が主流ですが、場合によっては別のサイズを使うことも。構造材の種類による幅と厚みの違いは次のようになります。

           
【構造材のサイズ一覧】
構造材 サイズ
2×3材 厚み:38㎜ 幅:64㎜
2×4材 厚み:38㎜ 幅:89㎜
2×6材 厚み:38㎜ 幅:140㎜
2×8材 厚み:38㎜ 幅:184㎜
2×12材 厚み:38㎜ 幅:286㎜

出典:農林水産省「日本農林規格」

構造材のサイズが変わることで、強度や断熱性が変わってきます。2×4材以外の構造材が使われるケースとしては、より強度をもたせたい2階以上の床に2×10材を使う、より断熱性を高めたい場所に2×6材を使う、などです。

ツーバイフォー工法による建築のメリット

ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

ツーバイフォー工法への注目が高まっているのは次のようなメリットがあるためです。

  • ・震災への対策になる
  • ・火災保険料を抑えられる
  • ・外部の音が伝わりにくい
  • ・省エネルギーができる
  • ・建築費を抑えられる
 

ツーバイフォー工法の住宅は耐久性や耐震性が高いため、震災対策、火災保険料の節約に繋がります。その他に遮音性や気密性の高さ、建築費が抑えられるというメリットは、費用を抑えながら性能の高い家づくりをしたい方にとって魅力的でしょう。それぞれのメリットを詳しく解説していきます。

震災への対策になる

ツーバイフォー工法の六面体構造は、地震による縦揺れや横揺れを建物全体で受け止めることで分散。一カ所に力がかからないことでねじれや変形が発生しにくいため、地震の際でも建物が崩壊しにくくなると言われています。

一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会が行ったアンケートによると、2011年の東日本大震災で被害に遭ったツーバイフォー住宅のうち、95%が「当面補修をしなくても居住に支障がない」という結果に。津波による被害を除けば、98%まで数値が上がるとのことでした。地震が多い日本において、耐震性の高さは家族の安心につながると言えるのではないでしょうか。

火災保険料を抑えられる

火災保険の保険料は建物の構造によって変わります。基本的に木造住宅は保険料が高く設定されやすいのですが、ツーバイフォー工法で建てられた住宅は保険料が安くなる場合があるのです。理由として、ツーバイフォー工法で建てられた住宅は、その多くが省令準耐火構造を満たしていることが挙げられます。

省令準耐火構造とは「建築基準法に定められた準耐火構造」に準ずる防火性のある建物のことで、「外部からの延焼防止」「各室防火」「他室への延焼遅延」といった特徴のある建物です。

ツーバイフォー工法は壁や天井の内側全体に石膏ボードを貼るのですが、石膏ボードは火に触れることで熱分解を起こして蒸気を発生させます。石膏ボードより内側は燃えても、外側は燃えにくくなり、規模によってはそのまま消火することも。さらにツーバイフォー工法のファイヤーストップ構造も火が燃え広がるのを防ぐため、延焼の危険性を下げる役割を果たしています。

外部の音が伝わりにくい

ツーバイフォー工法で建てられた住宅は、外壁が断熱材や石膏ボード、外壁材といったいくつもの素材によって多重構造になっているため、外部の音が伝わりにくくなっています。人通りや車通りが多い場所であっても、遮音性が高ければ外部の音から影響を受けにくくなるでしょう。

また、遮音性が高いということは家の中の音が外に漏れにくいということ。小さな子どもがいるご家庭など、生活音が漏れるのが心配だという場合も安心できるのではないでしょうか。

省エネルギーができる

ツーバイフォー工法は、均一サイズの建材を利用することで建材同士に隙間が生まれにくくなるため、在来工法に比べて気密性が高くなると言われています。気密性が高いということは、エアコンで調整した空気が外気温に影響されにくいということ。つまり、少ないエネルギーで快適な気温を維持できるということになります。

さらに、ツーバイフォー工法で建てた住宅は断熱性も高いため、より外気温からの影響を受けにくくなるのです。気密性や断熱性の高さは光熱費の節約に繋がるため、家づくりではチェックしておきたい項目と言えるでしょう。

建築費を抑えられる

ツーバイフォー工法の特徴として、在来工法に比べシンプルな方法で住宅を建てられるという点が挙げられます。複雑な設計が必要になる在来工法は大工の熟練度によって完成度に差が出ますが、建材を組み合わせるシンプルな設計のツーバイフォー工法では大工の熟練度に影響を受けにくくなります。

そのためあえて熟練の大工を雇う必要がなく、人件費を削減することが可能です。また、在来工法に比べて工期が短いことも費用を抑えることに繋がっています。

ツーバイフォー工法による建築のデメリット

ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

メリットの多いツーバイフォー工法ですが、満足度の高い家づくりのためには次のようなデメリットがあることも理解しておくことが大切です。

  • ・間取りの自由が利かない
  • ・後からリノベーションしにくい
 

例えば、ツーバイフォー工法はその特徴上、間取りの自由が利きにくくシンプルな間取りになることが多くなります。また、後からリノベーションがしにくいというデメリットも。それぞれ詳しく見ていきましょう。

間取りの自由が利かない

ツーバイフォー工法は建材を組み合わせて箱状の空間を作り、その箱を横に並べたり上に積んだりして設計していくため、間取りに制限が出てきます。リビングを広くしたいからこの壁を取り払う、壁を壊して大きな窓をつけるといった自由な変更が構造上難しくなるのです。

在来工法は希望に合わせて自由に間取りを設計できるのが魅力として挙げられるため、比較すると、間取りへの制限はツーバイフォー工法の大きなデメリットと言えるでしょう。

とはいえ、全く変更が利かないというわけではありません。依頼時の段階から間取りを変更する可能性があると分かっていれば、対応できるようにプランニングしてもらうことも可能です。打ち合わせでは理想や希望をしっかりと伝えていきましょう。

後からリノベーションしにくい

ツーバイフォー工法は面で支える構造になっているため、壁を取り壊して部屋同士を繋げる、といったリノベーションは難しくなります。ライフスタイルや家族構成の変化に合わせて家をリノベーションしていきたい、という方には、ツーバイフォー工法はあまり向いていない工法と言えるかもしれません。

また、ツーバイフォー工法は在来工法に比べると天井裏のスペースが狭くなるという特徴も、リノベーションの難易度を上げると言われています。

しかし、あらかじめリノベーションする計画で設計を依頼すれば、間取りの変更も可能です。またリノベーション業者を探す際、ツーバイフォー工法の住宅をリノベーションした経験があるところを選ぶのもおすすめ。専門的な知識を元に、具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。

ツーバイフォー工法を採用するハウスメーカーの比較ポイント

ツーバイフォー工法とは?在来工法との違いやメリット・デメリット

在来工法に比べて難しい技術が必要ないと言われるツーバイフォー工法ですが、住宅を建てる際は依頼するハウスメーカー選びが重要です。ハウスメーカーによって技術力が異なるため、場合によっては残念な仕上がりになることも。後悔しない家づくりのために、いくつかのハウスメーカーを比較してそれぞれの違いを知ることが大切です。

ハウスメーカー選びの基準はいくつもありますが、特に次の2点に注目することをおすすめします。

  • ・空調・換気システムの技術はあるか
  • ・ツーバイシックス工法に対応しているか
 

具体的な内容をご説明しましょう。

空調・換気システムの技術はあるか

ツーバイフォー工法のメリットとして挙げられる気密性の高さは、湿気に弱くなるという一面もあります。そのため、空調や換気システムはツーバイフォー工法の住宅を建てる上で大切なポイント。空気を入れ換えることで湿気を逃し、結露やカビの発生を防ぐことに繋がります。

また、空調・換気システムはハウスメーカーごとに独自の技術開発をしていることもあります。24時間換気や冷暖房をおこなう「全館空調システム」を導入する場合で考えても、メーカーによって導入費用や電気代、後々のメンテナンスなどさまざまな違いが。ハウスメーカーごとにどのようなシステムを取り入れているのか、どのような技術があるのか、比較してみることをおすすめします。

ツーバイシックス工法に対応しているか

ツーバイシックス工法は、ツーバイフォー工法に比べて木材の幅が広くなるため、構造の強さや断熱性が向上します。

ハウスメーカーに相談してみた結果、ツーバイフォー工法のプランでは理想とする住宅ができそうもない。そういった時にツーバイシックス工法がぴったりくるかもしれません。ツーバイフォー工法、ツーバイシックス工法の両方に対応しているハウスメーカーであれば、希望に合わせて柔軟に対応してくれるでしょう。

ツーバイシックス工法は対応しているハウスメーカーが限られてきます。各ハウスメーカーのホームページを見たり、直接問い合わせたりして、ツーバイシックス工法に対応しているか確認してみましょう。

まとめ

ツーバイフォー工法は断熱性・耐震性などに優れ、多くのメリットがある工法です。一方で間取りに制限があるといったデメリットもありますが、解決策がないわけではありません。より大空間のリビングが欲しい方、長い目でリフォームプランを考えられる方、デザイン性よりも断熱性や耐震性といった性能を重視したい方、そんな方にはツーバイシックス工法での住宅づくりが向いているかもしれません。ライフスタイルや家族構成も踏まえ、ツーバイフォー工法での家づくりについて検討してみてください。

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