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遺産相続の基礎について、あらかじめ勉強しておくことで、いずれ来るであろう相続時にあわてずに備えることができます。
「どのくらいの税金を払うのか」「いつまでになにをすればいいのか(遺産相続の期限)」「困ったときの相談先はどこがあるのか」といったことを把握しておきましょう。



CHECK
遺産相続は個々のケースによって法律が変わる、とてもデリケートなものです。
必ず弁護士や税理士など、専門家に直接相談することをおすすめします。
記事の最後で「あなたは誰に相談すればいいのか」を紹介するので、参考にしてください。

遺産相続の基礎まとめ~遺言書の有無と分割の種類~

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遺産相続とは、故人が所有していた財産を受け継ぐことです。

もし、受け継ぐ相続人が一人であれば、そのままそっくり継ぐだけでトラブルは生じません。
しかし、親子や兄弟で遺産相続をする場合には、遺産を分割する必要があります。
その際に、親子間や兄弟間でトラブルが発生する可能性があるのです。

遺産分割の方法はひとつではありません。
ここでは、複数人で遺産相続をする場合の分割方法について、基礎的なことを解説します。
ただし、遺産相続人の数や属性によってケースは大きく変わりますので、詳しくは専門家に相談するといいでしょう。

遺産相続は「遺言書の有無」で分割方法が変わる

遺産相続と言えば、よく聞くのは遺言書です。
終活ブームによって、「遺言書を作成したほうがいい」とは聞くものの、その効力についてはよく知らないという人も多いのではないでしょうか。

遺産相続の分割方法は、亡くなった人(被相続人)の遺言書があるか・ないかで、大きく変わります。
遺言書がある場合、基本的にはその内容で遺産分割が行われます。
遺言書がなければ、相続人同士で遺産分割協議が行われるため、その時に兄弟間など相続人同士のトラブルになることも。
それゆえ、遺産相続時のトラブルを防ぐためにも、遺言書は有効なのです。

▼遺言書(遺言状)あり

遺言書とは、被相続人が生前に遺産分割について自分の意思を記したものです。
遺言書の効力は強く、遺言書がある場合は基本的に遺言書で指定された方法に従って遺産を分割することになります。

遺言書の開封については厳格で、勝手に開封してしまうと5万円以下の過料になることも。遺言書は、家庭裁判所に提出してその検認を受ける必要があります。
(ただし、公正証書で作成された遺言書は、この限りではありません。)

もし、遺言書に「遺産は全て長男に渡す」というような記載がされていた場合、必ずそのとおりにしなければならないのでしょうか?
実は、法で定められた法定相続人には、遺留分という最低限の割合を相続する権利が保証されています。
たとえ、「遺産を全て長男に渡す」といった遺言があったとしても、長男以外の相続人は遺留分減殺請求をすることで、自分の遺留分を取り戻すことができるのです。

▼遺言書(遺言状)なし

遺言書がない場合は、法定相続人が全員で話し合いをして遺産分割を行います(遺産分割協議)。

相続する遺産は、現金や預金だけとは限りません。
土地や建物といった不動産があると、分割も複雑になります。
不動産の分割方法には種類があり、主に下記の4つです。

・現物分割:土地などを分筆して分割する方法
・換価分割:不動産を売却して分割する方法
・代償分割:不動産を相続した人が、他の相続人に持ち分相当額の金額を支払う方法
・共有分割:不動産の所有権をそれぞれの持ち分で共有にする方法

遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停に移行することも。
遺産分割調停とは、家庭裁判所に相続人が申し立てをし、調停官や調停委員が話し合いの間を取り持って、分割内容を合意させていく方法です。

遺産相続は不動産・土地・預金…借金も?!手続きは期限あり

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遺産相続は、現金や預金だけでなく、家や土地などの不動産や有価証券といった財産も対象となります。
また、相続財産には借金や支払うべき税金などのマイナスの財産も含まれます。
そのため、一緒に住んでいた配偶者や子などの家族であっても、故人(被相続人)の財産を全て把握するのは容易ではありません。

遺産相続では、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産まで、基本的には全て相続することになります。
主なプラスの財産とマイナスの財産は、下記のとおりです。

<相続財産>

■プラスの財産
・現金、預貯金
・土地建物などの不動産
・国債や投資信託、株式などの有価証券
・著作権などの知的財産権
・損害賠償請求権や貸付金債権などの債権
・自動車や貴金属、骨とう品などの財産
・農業用機械などの事業用財産
・ゴルフ会員権 など

■マイナスの財産
・住宅ローンなどの借入金
・延滞した家賃などの未払金
・他者から預かっている敷金や預かり金
・連帯保証人などの保証債務
・税金 など

このほかに、遺産分割の対象には含まれない財産というものもあります。
代表的なものは下記の通り。

<相続財産にはあたらないもの>
①墓石や仏壇などの祖先を祀る祭祀財産
②生命保険の死亡保険金(ただし相続税の対象にはなります)
③身元保証人などの信用保証
④年金や生活保護の受給権
⑤養育費の支払い義務 など

③~⑤の権利や義務は、本人が死亡した時点で効力がなくなります。

CHECK 故人の遺産を調べる方法もある
相続財産について、「どれだけの財産があるのかまったくわからない」というケースも少なくありません。
故人の遺産を調査するには、弁護士に依頼するのがおすすめ。相続に強い弁護士に依頼すれば、プラスの財産もマイナスの財産も全てを調べることができます。


遺産相続には期限がある!相続放棄は3ヶ月以内に手続きを

遺産相続でプラスになる財産を相続する場合は、「単純認証」といって何の手続きも必要ありません。
ただし、相続人が知らなかった故人の借金などがあると、相続財産が減ったり、マイナスになったりする可能性があるので、必ず調査をしましょう。

▼マイナス財産が多い

遺産相続で、故人の借金などマイナスの財産が多い場合、相続人は相続をせずに相続財産を放棄することができます。
ただし、相続放棄の期限は、相続を知ってから3ヶ月以内。意外と短いので注意が必要です。
相続放棄の手続きは、弁護士に相談しましょう。

▼マイナス財産があるかもしれない

もし、故人の財産の全容がすぐにはわからず、マイナスの財産があるかもしれない場合はどうすればいいのでしょうか。
この場合、プラスの財産でマイナスの財産をカバーできる限度までを相続する、「限定認証」という手続きができます。
限定承認の期限も「相続を知ってから3ヶ月以内」なので、早めに弁護士に相談するとよいでしょう。

遺産相続の「法定相続人の順位」と「法定相続分」について

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遺産相続における、相続人の範囲や順位、受け取ることができる割合は、法律で決まっています。

例えば、「相続人が配偶者だけ」や「配偶者は亡くなっていて実の子供がひとりだけ」というケースであればわかりやすいですよね。
しかし、配偶者も子供もいない場合や、配偶者以外の人との間に子供がいる場合など、複雑なケースもあります。

遺産相続における順位とその相続分について見ていきましょう。

法定相続人
第一順位 直系卑属(子供や孫)
第二順位 直系尊属(父母や祖父母)
第三順位 兄弟姉妹

民法では、配偶者以外に相続人になる人の順位を定めています。
亡くなった人に配偶者がいなければ、単純に法定相続人の数で分割することになります。
亡くなった人に配偶者がいる場合、配偶者は基本的には必ず相続人になりますので、相続の割合が変わってきます。

法定相続分
第一順位 配偶者:1/2
子供・孫(※1):1/2
第二順位 配偶者:2/3
父母・祖父母(※2):1/3
第三順位 配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4

(※1)孫は、子供が存命でない場合にのみ相続する
(※2)祖父母は、父母が存命でない場合にのみ相続する

配偶者は基本的には必ず相続人となります。
子供が2人いるなど同順位の相続人が複数いる場合、相続分はそのなかで均等に分けることになります。

▼遺産相続の相続順位のシミュレーション

遺産相続をする相続人が、配偶者と子供2人だった場合、配偶者が1/2、子供がそれぞれ1/4ずつとなります。

■配偶者と子供2人の場合の相続順位と割合
配偶者:1/2  子供A:1/4  子供B:1/4

これが最もオーソドックスなパターン。
では、故人の父母が存命の場合はどうでしょう。

■配偶者と子供2人と父母の場合の相続順位と割合
配偶者:1/2  子供A:1/4  子供B:1/4  父:0  母:0

故人に子供がいる場合、父母は相続人にはなれません。
従って、配偶者と子供2人で分けることに変わりありません。

では、故人に子供がいない場合はどうでしょうか。

■配偶者と父母の場合の相続順位と割合
配偶者:2/3  父:1/6  母:1/6

子供がいない場合、配偶者の相続割合は2/3となります。
そして残りの1/3を故人の父母で分けます。

内縁には相続権がないけど、異母兄弟には相続権あり

遺産相続時に、内縁の妻や夫、その子供がいる場合の相続順位はどうなるのでしょうか。

実は、内縁の妻や夫は法的に認められていないため、相続権はありません。
故人が遺言状に記載した場合は、相続ではなく遺贈として財産を受け取れるケースはあります。
一方で、内縁の妻や夫との子供、つまり故人の子供から見た異母兄弟・異父兄弟がいた場合は、認知されていれば彼らにも子と同等の相続権があります。

遺産相続税は控除あり!二次相続の税金対策

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遺産相続をすると税金がかかる場合があります。その税金が相続税です。
2015年に相続税の基礎控除について大幅な改正がされ、話題となりましたが、その内容をきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。

遺産相続をしても、必ず相続税が発生するわけではありません。
相続した財産から、一定の金額が控除されます。
主な控除は、「基礎控除」と「配偶者控除」の2つです。

相続税は税率が高いため、これらの控除は非常に重要です。
その計算の仕方はケースによって異なりますので、自分の場合にはどうなるのか試算をしてみるといいでしょう。

CHECK 遺産相続を受けても確定申告の必要はなし
相続した遺産は、収入ではなく継承と考えられるため、所得税や確定申告の対象にはなりません。
相続した遺産にかかる税金は、相続税のみです。


遺産相続税の「基礎控除額」とは

相続税の基礎控除とは、「ここまでは相続税のかからない範囲」のことです。
つまり、相続する財産がプラスマイナス含めて基礎控除以下の金額であれば、相続税がかからず、それ以上であれば超えた分にのみ相続税がかかるというわけです。

遺産相続税の基礎控除額は、以下の式で表されます。

遺産相続税の基礎控除額
3000万円+(600万円×法定相続人の数)

具体的な例を見てみましょう。
例えば、法定相続人が子供3人だった場合の基礎控除は下記のようになります。

3000万円+(600万円×3人)=4800万円

相続税には「配偶者控除」がある

次に重要なのは、配偶者控除です。
夫婦のどちらかが亡くなった時、多くの税金を取られてしまっては、残された配偶者の生活が立ち行かなくなるケースもあります。
そのため、配偶者が相続する場合に限って、大幅な控除が設定されているのです。

配偶者控除は、「配偶者の法定相続分相当額」もしくは「1億6000万円」のどちらか高い方が適用されます。

遺産相続の二次相続の税金対策

夫が亡くなった時、妻が配偶者控除を使って相続税がかからなかったとしても、妻が亡くなり、その子供の代が相続する時に、多額の相続税がかかるというケースがあります。
この、子供の代が相続することを「二次相続」といいます。

二次相続では、一次相続に比べて、①配偶者控除分がなく、②一次相続の財産もプラスされるため、相続税がかかるケースが多くなるのです。

では、二次相続の税金対策はどうすればよいのでしょうか。
具体的には、下記の2つがポイントとなります。

・一次相続時、配偶者の生活に問題なければ、子供にもできるだけ分配しておく
・年間110万円の贈与税の非課税枠を使い、毎年少しずつ子供に生前贈与しておく

遺産相続の税金対策は、「二次相続」こそ重要ですよ!

遺産相続の手続きは、弁護士・税理士・司法書士に相談

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遺産相続の手続きを相談する先として、どのようなところがあるのでしょう。
遺産相続は、その内容によって相談する先が変わります。

例えば、遺産分割でもめている場合や相続放棄をしたい場合、故人の財産を調査したい場合に相談するなら、弁護士がいいでしょう。
また、相続税の申告や故人の確定申告(準確定申告)をする場合は税理士、相続登記をする場合は弁護士または司法書士となります。

<遺産相続関連の相談先>

相談先 内容
弁護士 ・遺産相続の分割でもめている
・遺産相続を放棄したい
・故人の財産を調査したい
・相続登記をする
税理士 ・相続税の申告
・故人の確定申告(準確定申告)
司法書士 ・相続登記をする

ここで注意しなければならないのは、同じ弁護士や税理士でも得意分野があり、全員が遺産相続に精通しているとは限らないということです。
遺産相続というのはとても個別性の高い案件ですので、相続を専門としている弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

遺産相続は無料相談を利用しよう

遺産相続について弁護士や税理士に相談すると、相談料が発生するため敬遠される人も少なくありません。
そういった場合は、無料相談を利用することをおすすめします。
弁護士会や税理士会では無料相談の窓口を設けていますし、行政が実施している無料法律相談なども利用されるといいでしょう。

弁護士の無料相談
・弁護士会の無料相談
・裁判所の無料相談
・法テラス(日本司法支援センター)の無料相談
・市区町村役場の無料法律相談

税理士の無料相談
・税理士会の無料相談

遺産相続について無料相談を受けたい場合は、まずはお住まいの都道府県の弁護士会や税理士会を確認しましょう。

無料相談は、弁護士会に所属する弁護士が当番制で行っています。
その日の担当弁護士に相談してもいいですが、遺産相続の問題が得意な弁護士を紹介してもらうこともできます。
また、電話による無料相談を実施している地域もあるので、各都道府県の弁護士会の公式サイトを確認してみてください。

インターネット上で匿名にて弁護士に相談できるようなサイトもありますが、遺産相続の問題は個別性が高いため、正確な回答を得るのは難しいです。
確実性を求めるなら、必要書類を準備して、直接弁護士に相談することをおすすめします。

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