不動産を贈与すると「贈与税」が発生する? 譲渡と贈与の違いも解説!


贈与と譲渡は異なるもの!?「贈与税」が発生するケースとは?

不動産を贈与すると「贈与税」が発生する? 譲渡と贈与の違いも解説!

日常生活においては、譲渡(他者に譲り渡すこと)と贈与(他者に贈ること)という言葉にあまり大きな違いを感じられないかもしれません。しかし、税制上においては明確な違いがあり、譲渡は代金を受け取って財産や権利を他者へ譲ること、贈与は無償で(代金を受け取らずに)財産や権利を他者へ与えることを意味しています。

そして、個人間で一定額を超える贈与が行われた場合には、与えられた(贈与を受けた)側に「贈与税」が課される一方で、与えた(贈与を行った)側には税金が課されません。対象的に、譲渡の場合は代金を支払って譲り受けた側(買い手)は非課税で、譲った側(売り手)側が「譲渡所得税」の課税対象となります(ただし、課税は譲渡益が発生していた場合のみ)。

「贈与税」には、相続税を補完する役割を果たすために設けられたという側面があります。負担の重い相続税を免れるため、「生前贈与」を繰り返して相続財産を減らそうとする行為を防止する意図があるのです。

こうしたことから、「贈与税」の税負担は相続税よりも重くなるように設定されています。1年間(1月1日〜12月31日)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対し、10〜55%の税率が課されます。

言い換えれば、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税は非課税で、申告手続きも必要ありません。不動産の贈与を行うとこの非課税枠を超えてしまうケースが珍しくありませんから、「贈与税」の発生を念頭に置いたほうがよさそうです。

本来、贈与は与える側と与えられる側の合意のもとに行われる行為です。しかしながら、当事者たちが「贈与する・贈与を受ける」との自覚がないまま、税務当局の判断によって贈与行為であるとみなされるケースもあります。

それが「みなし贈与」と呼ばれるもので、先述したように当事者たちは贈与に該当すると思っていないことから、申告漏れになっているケースが大半だと言えるでしょう。税務署から指摘されて申告を行うことになり、延滞税などのペナルティも発生しがちです。

「みなし贈与」の判定基準は法律によって明確に定められているわけではなく、過去の判例などをもとに税務署が判断しています。「みなし贈与」と判断されやすい例を挙げると、不動産の名義変更を無償で行ったケースや、不動産や有価証券などの財産を実勢価格よりも著しく安い価格で譲渡したケースなどです。

贈与税の課税方式には2つのパターンが! それぞれの計算方法は?

相続税の課税には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの方式があり、どちらかを選択するようになっています。「暦年課税」とは、1年間(1月1日〜12月31日)に贈与された財産の合計額に対して「贈与税」が課され、以下の計算式を用いて課税額が算出されます。

贈与税の課税価額=1年間に贈与された合計−基礎控除(110万円)

贈与税額=贈与税の課税価格×累進税率−課税価格に応じて定められた控除額

ここで注意したいのは、「特例贈与財産」と「一般贈与財産」のどちらに該当するのかによって、適用される税率や控除額が異なってくることです。「特別贈与財産」は父母や祖父母などの直系尊属からの贈与で、贈与を受けた人が成人(その年の1月1日時点で18歳以上)であるケースです。この「特例贈与財産」に当てはまらないケースは、すべて「一般贈与財産」になります。

一方、「相続時精算課税」は「贈与税」の負担を抑えながら、次世代へと資産が円滑に移転することを促進するために設けられた制度です。1年間(1月1日〜12月31日)に贈与された財産の合計額のうち、2500万円までに関しては「贈与税」が課せられず、その分は相続で受け継いだ財産に加算して相続税が計算されるようになっています。

「相続時精算課税」方式を用いた場合の「贈与税」は、以下の計算式で算出されます。

贈与税の課税価額=1年間に贈与された合計−特別控除額(2500万円)

贈与税額=贈与税の課税価格×税率(一律20%)

「相続時精算課税」は「暦年課税」よりも控除額が大きくなっていますが、将来的に相続が発生した際には、それまでに贈与されてきた財産の一部(年間2500万円ずつ控除を受けてきた分)が相続財産に加算される点には留意したほうがいいでしょう。

なお、2023年に発表された税制改正大綱で、「相続時精算課税」においても年間110万円の基礎控除枠が設けられました。2024年1月1日以降に「相続時精算課税」を選択した場合、年間110万円までの贈与には「贈与税」がかかりません。

不動産の売却で「贈与税」が発生しやすいケースとは?

冒頭でも述べたように、本来ですと不動産の売却(譲渡)は「贈与税」の課税対象とはならないはずです。しかし、やはり先述したように、税務当局が「みなし贈与」に該当すると判断した場合は事情が異なってきます。

実勢価格と比べてかなり安い価格で譲渡したケースが典型例で、税務当局はやみくもにチェックしているのではなく、売り手と買い手の関係性などに着目し、その可能性が高そうな取引に目星をつけて調査している模様です。たとえば親子や兄弟など、親族間における取引には特に目を光らせていると思っておいたほうがいいでしょう。

「筆」は登記簿上において1つの土地を表す単位で、必ず1筆の土地ごとに1つの登記簿が作成され、1筆の土地ごとに「地番」が割り振られています。「分筆」とは、1筆の土地を複数に分け、それぞれを独立した1筆の土地として登記し直すことです。

通常なら、買い手は相場と比較して妥当か、できれば割安な価格での取引を望むはずです。その点、親しい間柄なら幾ばくかの資金の支払いで手を打ち、形式的には譲渡の体裁を整えるといったこともやりやすいと言えるでしょう。

所有資産を管理するための法人を設立するケースが見受けられますが、そういった際にも嫌疑をかけられる可能性があります。その代表や役員が個人名義で所有していた不動産を資産管理会社の名義に変更したり、資産管理会社に譲渡したりしていると、相続税逃れのための操作ではないかと疑われがちです。複数の法人を所有している人が関連会社間で不動産の譲渡を行っている場合も同様です。

なお、個人から法人への贈与では、与えた側である個人に「みなし譲渡所得税」、与えられた側である法人に法人税が課されます。法人から個人への贈与では、与えた側である法人に法人税、与えられた側である個人に所得税が課されます。法人間の贈与では、譲った側と譲られた側の双方が法人税の課税対象となります。

不動産を贈与しても、「贈与税」が課されないケースもある!?

不動産を贈与しても、「贈与税」がかからないケースも存在します。その一つは、先述したように年間の贈与額が非課税枠である基礎控除枠(110万円)内にとどまっていた場合です。

もう一つは、離婚に伴う財産分与で不動産が贈与されるケースで、財産の清算やその後の生活保障などの観点から、「贈与税」の課税対象となりません。ただし、あまりにもその贈与が高額であったり、税逃れのための形式的な離婚である疑いが持たれたりすると、税務当局の調査が入る可能性が考えられます。

「生前贈与」を目的に不動産を売却する際、税負担を軽減する方法とは?

不動産を親族(将来の法定相続人)に譲渡(売却)した際に、税務署から「みなし贈与」ではないかと疑われないためには、実勢と大幅にかい離した価格の取引しないのが最善です。しかしながら、取得時よりも高い譲渡価格になった場合には、売り手(不動産を譲る側)が譲渡所得税を負担することになります。

いっそのこと不動産を売却してしまい、年間110万円という「贈与税」非課税枠に着目して少しずつ現金の「生前贈与」を毎年繰り返していくことを考えた人もいることでしょう。「暦年贈与」と呼ばれる節税手法で、110万円を超えている分にのみ「贈与税」が課されます。

残念ながらこの方法を用いた場合も、最初に不動産を売却した時点で譲渡所得税が発生する可能性があります。しかも、2023年発表の税制改正大綱によって、「暦年贈与」に関する規制が強化されました。

被相続人(財産を遺す人)が亡くなる直前に、相続税を逃れるために駆け込みで「生前贈与」を行う行為を防止する目的で、従来から「生前贈与加算」という規定が設けられていました。贈与を受けた日の3年以内に贈与を行った人が亡くなった場合、「生前贈与」はなかったこととみなし、その分は相続税の課税対象に入れるというものです。

今回の税制改正に伴い、「生前贈与加算」の対象期間が7年に延長されました(ただし、延長した4年間の贈与のうち、100万円までは相続財産に加算されない)。2024年以降の贈与から適用され、2027年以降に発生する相続から7年の「生前贈与加算」が実施されることになります持ち戻し期間が加算されます。

婚姻期間が20年以上に達している配偶者へ居住用不動産を贈与するケースに絞れば、「贈与税」をかなり抑えられる方法が考えられます。共通の非課税枠である基礎控除(110万円)に加えて、最高2000万円まで控除を受けられる「配偶者控除」という制度が設けられているのです。

そうすれば、贈与する不動産の「贈与税評価額」から一定額を控除できるので、その分だけ「贈与税」の負担が軽くなります。ただ、贈与を受けた配偶者がその不動産に贈与の翌年3月15日まで実際に住んでおり、その後も引き続き住む予定であることが前提となっているので、その点には注意しておきましょう。

まとめ

譲渡は代金を受け取って財産や権利を他者へ譲ること、贈与は無償で(代金を受け取らずに)財産や権利を他者へ与えることを意味し、相続税逃れで過度な「生前贈与」を防止するため、個人間で年間110万円を超える贈与を行った場合には、超過分に対して最高税率55%の「贈与税」が課されます。また、無償の名義変更や、実勢よりもかなり安い価格での譲渡なども、税務当局から「みなし贈与」を判断されて、「贈与税」の課税対象となってきます。

「贈与税」の負担を抑えるため、不動産を売却したうえで現金を少しずつ毎年贈与する「暦年贈与」を実践する人もいます。しかし、売却した時点で譲渡所得税が発生する可能性がありますし、2024年から規制が強化され、「生前贈与加算」の対象期間が3年から7年に延長されました。

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