「既存不適格建築物」とは? 注意点や高く売却する方法まで解説!


「既存不適格建築物」には、どういった建物が該当する?

「既存不適格建築物」とは? 注意点や高く売却する方法まで解説!

建築基準法とは、日本国内で建物を建てる場合の敷地や構造、設備、用途に関して、必要最低の基準を定めた法律です。1950年に施行されましたが、時代の変化に対応して今日までに様々な改正が実施されてきました。

その結果、建築当時は適法だったものの、法改正に伴って変更された新たな基準を満たしていない建物が存在しています。改正後の基準を満たしていない過去の適法建物のことを「既存不適格建築物」と呼び、例外的に現行の法律による規定適用を除外しています。

具体的に改正が行われてきた基準とは、用途地域(建築できる建物の種類、用途の制限を定めたルール)、高さ制限、建ぺい率(土地と建物の面積の割合)制限、容積率制限、隣地間距離制限、道路制限(接道義務)、日影規制の適用制限、耐震基準などです。

主な既存不適格となる法改正のポイント

  • ・高さ制限の変更
  • ・建ぺい率、容積率の変更
  • ・隣地間距離規制
  • ・道路制限:接道義務、セットバック
  • ・日影規制
  • ・耐震基準:1981年、2000年変更

「既存不適格建築物」の典型例として挙げられるのは、法改正に伴って「接道義務」を果たせなくなったというケースです。現行の建築基準法では、原則として幅員4メートル以上(特定行政庁が幅員メートル以上を道路として扱う区域では6メートル以上)の道路(公道)に、2メートル以上の間口で土地が接していることが「接道義務」の基準となっています。

しかし、改正前の法律では「1.8メートル以上の間口で土地が接している」というルールが定められていました。この昔の基準をぎりぎり満たすように区画された土地に建つ家は、「既存不適格建築物」に該当します。

「既存不適格建築物」と違法建築物とは何が違う?

法律が定めた基準を満たしていないといえば、違法建築物(違反建築物)を連想する読者もいることでしょう。しかし、違法建築物と「既存不適格建築物」とは、根本から異なっているものです。

先に述べたように、「既存不適格建築物」は建築時点において、当時の法律が定めた基準を満たしていました。そして、その後の法改正で適用された新しい基準には適合していないという建物です。

これに対し、違法建築はその名の通りで、当時の法律が定めた基準にも適合しないまま建てられた建築物のことです。つまり、最初から法律に違反している状態であることを意味しているのです。

建築基準法における基準とは、建物の安全性という観点からも定めたれた必要最低限のルールです。それを満たしていないと、人の命に関わるような事故が発生する可能性も考えられます。

こうしたことから、違法建築物であることが明らかになると、自治体の首長はその建築主や工事の請負人(または現場監督者)、所有者などに施工の停止や除却、移転、改築、増築、修繕、模様替え、使用禁止、使用制限などを命じることが可能となっています。さらに、違法建築の設計者や工事監理者、工事の請負人に対して、免許・許可の取消や業務停止処分などといった措置が取られることがあります。

「既存不適格建築物」はそのまま使用し続けられると説明しましたが、老朽化などで安全性に問題が生じた場合は話が別です。倒壊の恐れが出てきた「既存不適格建築物」については、管轄の自治体の判断次第で撤去される可能性があります。

増改築時に注意が必要
「既存不適格建築物」はそのまま住む事については問題なく、また購入した人がそのまま住むことについても問題ありませんが、その建物に「確認申請が必要となる増改築工事」を実施する場合は、申請時に役所より、同時に"不適格部分"の改善を求められる場合があります。 一般的には小規模な増改築であれば求められる事は有りませんが規模が大きくなる場合は注意が必要となります。購入や売却の場合、どの点が不適格になっているか?適格改修が可能な範囲なのか?は事前に確認していた方が良いでしょう。

「既存不適格建築物」の売却が容易ではない理由とは?

基本的にはそのまま使用し続けられる「既存不適格建築物」ですが、売却したい場合は様々な理由から苦戦しがちだと言えます。理由の一つとして挙げられるのは、「接道義務」を果たしていないことなどがネックとなって、建て替えが不可能なケースがあることです。

可能であったとしても、現行の基準を満たすように建て替えと、それまで建っていた「既存不適格建築物」よりも床面積が小さくなってしまうケースも出てきます。こうしたマイナス材料を抱えていることも、なかなか買い手が見つかりにくい理由です。

そもそも「既存不適格建築物」は昔の基準に沿って建てられているだけに、かなりの築年数が経過した建物が少なくありません。老朽化に伴ってその資産価値は下がっており、その点も売却しづらい理由の一つとなっています。

古い家は、安全性という観点からも敬遠されがちです。1981年6月1日以降に建築確認申請を通った建物には「新耐震基準」が適用されているのに対し、それよりも前に同申請を行った建物は「旧耐震基準」に基づいて建てられており、買い手がその安全性を問題視するのは無理のない話でしょう。

これらの難点を抱えていることから、「既存不適格建築物」の売却価格は近隣の相場よりも割安になるケースが多いと言えます。

「既存不適格建築物」を売却する際に注意すべきポイントとは?

「既存不適格建築物」の売却を進める際には、注意しておくべきいくつかのポイントがあります。売り手が「既存不適格建築物」に該当することを知っているなら、その事実を買い手に説明する義務を負うことがその一つです。「既存不適格建築物」であることを買い手が承知・納得したうえで売買契約を結ぶことが大前提となってきます。

「既存不適格建築物」は建て替えに制約が生じることから、住宅ローンを組む際の審査で担保価値が低く評価される傾向がうかがえます。その結果、審査自体に通らなかったり、希望額通りの融資を受けられなかったりする可能性が考えられます。

買い手が建て替えではなくリノベーションやリフォームを考えている場合も、「既存不適格建築物」はハンデを背負っていると言えます。リノベーションやリフォームにおいても、現行の法律で定められた基準に適合させることが求められるからです。

「既存不適格建築物」を上手に売却する方法とは?

ここまで「既存不適格建築物」の売却が難しい理由や注意点について述べてきましたが、買い手の間でまったく人気がないわけではありません。たとえば、過去の基準に基づいた容積率で建築されたゆとりある間取りの建物は、もはや現行の基準では同様のものを建てられないだけに、魅力的だと感じる買い手もいることでしょう。

古い家を残したまま売るべきか、それとも解体して売るべきかの判断はケース・バイ・ケースで、専門家の知恵を借りる必要があります。しかも、個々の専門家で見解が分かれることも珍しくないので、古い家を売る際には複数の不動産会社に査定を依頼することが鉄則となってきます。

様々な制約を抱えているだけに、やはり「既存不適格建築物」の売却は不動産会社に仲介してもらうのが賢明です。ただ、不動産会社によって「既存不適格建築物」に関する実績やノウハウに差があるはずですから、複数に査定を依頼することが原則となります。

「既存不適格建築」を積極的に買い取る業者も存在しますが、安く買い叩かれる恐れがあることには注意が必要です。買い取り業者を利用する際も、必ず複数に査定を依頼し、提示額の違いをシビアに見比べたいところです。

現行の建ぺい率や容積率を超えていることで「既存不適格建築」に該当しているなら、隣地を買収したうえで売却するという手も考えられます。隣地の買収によって現行の建ぺい率や容積率を満たせば、通常の中古物件として価格が査定されるからです。

「既存不適格建築」を解体し、更地として売りに出すのも一考でしょう。その際、注意すべきは建物を解体するタイミングです。

住居が建っている土地にかかる固定資産税は、税制上の特例によって更地のケースよりも大幅に軽減されています。固定資産税は1月1日時点の状況をもとに決定するので、1月2日以降に解体し、その年末までに売却するのがベストでしょう。

まとめ

「既存不適格建築物」とは、建築当時は適法だったものの、法改正に伴って変更された新たな基準を満たしていない建物のことで、例外的に現行の法律による規定適用を除外しています。そのまま使用し続けられるものの、建て替えやリノベーション、リフォームなどに制約が生じることもあって、なかなか容易には売却できないのが「既存不適格建築物」の実情です。

「既存不適格建築物」に該当する物件の売却を検討しているなら、必ず複数の不動産会社に査定を依頼し、同分野に強みを持つ事業者を見つけ出すことが重要です。また、ニフティ不動産の「住まい探しコラム」の売却関連記事に目を通し、下知識を身につけたうえで不動産会社との折衝に臨むと、精神的にも安心材料となるでしょう。

アプリなら新着物件を見逃さない!ニフティ不動産アプリ

部屋を借りる!賃貸版はこちら

住宅を買う!購入版はこちら