外国人に不動産を売却する方法とは?売却までの流れと注意点について解説


コロナ禍でも、外国人の不動産投資が過去最大規模に!

外国人に不動産を売却する方法とは?売却までの流れと注意点について解説

意外と知られていないようですが、日本は外国人が国内の不動産を購入することに寛大で、あまり厳しい規制を設けていない国です。永住権を持っていなかったり、居住地が海外であったりする外国人であっても、日本人とほとんど変わらない手続きで不動産を購入し、自分の名義で所有できます。

しかも、為替相場で円安(外貨に対する日本円の価値低下)が進んだことで、日本国内の不動産価格(円建て)は多くの外国人にとっても割安に感じられます。日本の金融機関から融資を受けられれば、世界的に見ても超低金利で資金を調達できます。

こうして好条件がそろっていることから、海外から日本の不動産市場に熱い視線が注がれており、実際に多くの外国人が投資を行っているようです。国土交通省不動産・建設経済局が2021年3月に公表した「令和2(2020)年度 海外投資家アンケート調査業務報告書」によれば、年間4兆円規模の投資が行われていると目される日本の不動産投資市場で、2020年(コロナ禍元年)に海外投資家が占めていた割合は34%に達し、2008年の金融危機以降で最大となったそうです。

同報告書で2020年に海外から投じられた資金を地域別に分類してみると、北米が59%で最も多く、次いでアジア(27%)、欧州(14%)となっています。

外国人が不動産を購入する際の手続きと必要書類

外国人が日本の不動産を購入する際に必要となる手続きは、基本的に日本人が購入するケースと同じです。購入の申込みを行い、重要事項に関する説明を受けたうえで売買契約を結び、手付金(契約金)を支払います。

そして、残金を支払うと物件が引き渡され、「所有権移転登記」の手続きを行います。日本人が購入するケースと異なってくるのは、「所有権移転登記」で必要となる書類の内訳です。

この登記は、売り手から買い手へと所有権が移ったことを登記所(法務局・支局・出張所)で保管されている帳簿(登記簿)に記載することを意味しています。「所有権移転登記」の手続きでは、下記の書類が必要となります。

    ●権利証または登記識別情報通知書
    ●司法書士への委任状
    ●固定資産税評価証明書
    ●住民票
    ●印鑑登録証明書
 

これらのうち、所定の条件を満たさないと外国人が取得できない可能性があるのは住民票と印鑑登録証明書です。まず、日本人と同じように市区町村の窓口で住民票と印鑑登録証明書を取得できる外国人とは、日本に住所があって下記のいずれかに該当する人です。

    ●中・長期在留者で在留カードが交付されている人
    ●日本において在留資格があり、短期滞在、外交・公用での在留資格ではない人
    ●特別永住者証明書の交付申請をして、法務大臣から許可を受けた人
    ●一時庇護許可書もしくは仮滞在許可書の交付を受けた人
    ●出生または日本国籍の喪失を理由に、日本に在留している方

これに対し、 住民票・印鑑登録証明書を取得できない外国人とは、日本ではなく海外に住んでいる人や、日本で許可されている在留期間が3カ月未満の人です。該当する場合は、住民票の代わりに「自国の公証役場または在日大使館で認証を受けた宣誓供述書」もしくは「自国の官公署で発行された住民登録証明書」のいずれかを提出します。

印鑑登録証明書の代替書類は、「自国の公証役場または在日大使館で認証を受けた宣誓供述書」もしくは「自国の在日大使館または日本の官憲が発行するサイン証明書」です。

外国人に不動産を売却する際の注意点

外国人に不動産を売却する際には、特有とも言えるいくつかの注意点があります。まず、日本語をきちんと理解できない場合は、買い手の母国語に翻訳した契約書や重要事項説明書を用意するとともに、必要に応じて通訳を手配しなければなりません(日本語を理解できる第三者を買い手の代理人に立てて売買契約を行うのは可)。

しかも、単に翻訳したり通訳をつけたりすればいいという事務的な対応ではなく、お互いが契約内容にについてきちんと理解したうえで、完全に同意が得られていることが求められてきます。

買い手がその内容を正確に理解していない状態で署名・捺印を行った場合、形式上は契約が成立しているかのように思われても、お互いが納得していることを前提とする不動産取引においては法的に有効ではありません。

買い手が住宅ローンを組むことを前提にしていた場合、その審査に通らない可能性も考えられます。金融機関は貸し倒れリスクを回避する目的から、日本における収入や永住権の有無などを受託ローンの利用条件を掲げており、これらに合致しないと現金一括払いでの購入しか選択肢がありません。

購入代金の支払いを巡って、為替相場の変動が影響を及ぼすケースも出てきます。買い手が母国の法定通貨やドルでの支払いを希望した場合、それを受け取って日本円に戻す際には必ず両替手数料がかかります。

そのうえ、為替相場で決済通貨に対して円安が進んだら、円建ての売却価格よりも受け取った代金が目減りしてしまいます(為替差損の発生)。こうした事態を防ぐためにも、買い手に為替変動リスクを負ってもらう日本円での支払いを前提に交渉を進めたいところです。

海外には、値下げ交渉が常識(商習慣)となっている国・地域があります。最初に提示される価格はつねに割高で、売り手と買い手が駆け引きを行いながら両者の妥協点(取引価格)を探っていくというスタイルが定着しているのです。

買い手の外国人にそういった商習慣がある場合、当然のように大幅な値引きを求めてきても不思議はありません。そうとはつゆ知らず、最初に提示した価格が妥当な水準であった場合は、下手に応じることもできなくて苦慮してしまうでしょう。

買い手のお国柄や商習慣も事前に確認し、値引きを前提とした価格設定で備えたり、交渉戦略を練ったりするなどの対応が求められてきます。

さらに、買い手が外国人だった場合はビザの取得や居住証明の手続きなど、様々な手続きが必要となってくるケースが考えられます。必要書類がすべて揃うまでにかなりの時間を要する可能性もあり、そういったことを念頭に置いたスケジュールで契約に臨むのが賢明です。

外国人に不動産を売却した場合の譲渡所得税は?

土地や建物を売却して得られた譲渡所得に課せられる税金は、給与所得などの他の所得と区別して納税額が計算されます(分離課税)。売買契約を結んだ際に印紙税、物件を引き渡す際に登録免許税を負担した後、翌年の確定申告において譲渡所得税を納めます。

買い手が外国人であっても、こうした納税の方法とスケジュールに違いは生じません。ただ、もしも売り手が外国人だった場合には、納税方法が2つのパターンに分かれてきます。

もっと現実的でオススメのタイミングと言えるのは、「得られた家賃収入の累計+売却価まず、日本に1年以上住んでいたり、日本の住所を取得していたりする外国人は国内の居住者とみなされます。そのため、納税の方法やタイミングは先述した「日本人が売り手のケース」と同様です。

これに対し、「日本非居住者」とみなされた外国人の場合は、買い手が譲渡所得税の源泉徴収相当額を支払うことが義務づけられています。売り手が日本に住んでいないと、申告漏れや未納が発生する恐れがあるからです。

買い手は源泉徴収相当額を納税し、売り手はその金額分が差し引かれた売却代金を受け取ることになります。そして、買い手は売り手に対し、売却代金から税額が差し引かれていると証明するための書類を提出します。

ただし、非居住者である外国人が売却した不動産であっても、源泉徴収が行われないケースがあります。それは、売買代金が1億円以下か、購入者が自己・親族の居住用として不購入した場合です。

外国人に不動産を売却することのメリットとは?

冒頭でも触れたように、すでに海外投資家は日本の不動産市場へ活発に投資を行なっています。今後は、さらにその規模が拡大していく見通しです。

前出の国土交通省不動産・建設経済局「令和2(2020)年度 海外投資家アンケート調査業務報告書」は、2020年における日本の不動産への投資額でトップ10にランクインした海外投資家を対象にヒアリングを行ったものでした。彼らの投資額の合計は、外国人投資家全体の85%に達しています。

同報告では今後の方針についても質問しており、ヒアリングに参加したすべての外国人投資家が日本全体への投資額を「増加させる」と回答していました。タイプ別の意向では、物流施設についでレジデンスが人気を博しています。

このように海外から日本の不動産が注目されていることに加えて、日本人の間では不人気の物件であっても、関心を示してもらえる可能性も考えられます。物件の良し悪しを判断する際に、外国人は価値を見出すポイントが異なるケースが多く、日本人には見向きをされない物件が人気化することもあります。

たとえば、日本人は新築をもてはやし、中古の場合もできるだけ築浅の物件を選ぼうとしがちです。ところが、海外では歴史的な建造物が珍重され、築100年級の賃貸物件が工学で取引されているケースが珍しくありません。

まとめ

円安がもたらす割安感や世界的に見ても珍しい超低金利なども追い風となって、外国人が日本の不動産に投資するケースが大幅に増えています。世界的に比較しても規制があまり厳しくないことから、日本の居住者ではない外国人であっても不動産を購入・所有することが容易です。

今後も外国人による日本の不動産投資は勢いが止まらない見通しであり、日本人には不人気の物件であっても彼らが興味を示す可能性が考えられるのも好材料でしょう。外国人の視野に入れた所有不動産の売却を検討する際にも、豊富なコンテンツを揃えているニフティ不動産の「住まい探しコラム」をお役立てください。

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