不動産売却における境界確定とは? その明示義務と重要性について解説


意外と誤解している!? 本来の「境界確定」の意味は?

不動産売却における境界確定とは? その明示義務と重要性について解説

「境界」とは、自分の所有地と他人の所有地(民有地もしくは公共用地)との境目(境界線)です。世間では「境界確定」について、当事者同士が確認し合ったうえで、境界線を明らかにすることだと認識されがちです。

しかしながら、本来の「境界確定」とは、裁判を通じて司法が境界線を確定させることを意味しています。所有者間で確認し合い、「筆界(正式な境界線)」に関する認識を共有する作業のことを、行政では「筆界確定」と読んでいます。

「筆界」とは、土地が登記された時点でその範囲を区画するものとして定められた境界線のことです。たとえ隣地の所有者から同意が得られたとしても、「筆界」の位置を変更することは認められていません。

ちなみに、明治時代(1873年)の地租改正で個々の所有地ごとに「公図(土地台帳附属地図)において線引きが施され、それによって確定・登記されたのが「筆界」のルーツとされています。以来、土地の分割・統合が行われる都度、新たな「筆界」が記されてきました。

意外と知られていないのですが、昔から塀などによる仕切りが設けられていたことで当事者同士は境界線であると信じ込んできたものの、実際には正式なものではないというケースが珍しくありません。このように、「筆界」とは異なる位置に設けられている境界線は「所有権界」と呼ばれています。

不動産売却時に「筆界」を明示する義務とその重要性について

「筆界確定」が行われていれば、所有地の境界線を巡って隣り合う土地の所有者と争いが生じる恐れはありません。裏返せば、「筆界」が明らかになっていない土地では、トラブルの火種が燻っていることを意味しています。

こうしたことから、土地の売買契約を結ぶ際には、売り手が買い手に対して「筆界」の位置を明らかにすることが義務づけられています。「筆界明示義務」と呼ばれ、これを怠ったまま土地を売却すると、売り手が損害賠償責任を負う恐れもあります。

「筆界明示義務」は法律によって定められたものではなく、「筆界」が不明であっても土地の売買自体は可能です。しかしながら、ほとんどの土地売買契約においては、条項の一つに「境界設置や立会い承諾書の取得」が掲げられています。

もともとその場所に住んでいた人の場合は、隣地との間に設けられている塀の位置と「筆界」が一致していないことを認識し、お互いが合意のうえでその状態を続けてきたケースも考えられるでしょう。新たにその土地の所有者となった人はそういった事情を把握しておらず、「筆界」を明示しないまま売買契約を結んでしまうと、何らかのきっかけで隣地の住民と争いが発生しかねません。

また、「筆界」を明らかにすることによって、契約書に記されている数値と、実際の土地の面積の整合性も確認できます。登記簿に記されている面積に応じて売買代金を決める「公簿売買」の場合、かなり昔の測量に基づく数値で、契約後に実測してみたらもっと狭かったというトラブルも起こりうるため、それを防ぐうえでも「筆界」の明示が不可欠だと言えます。

「筆界」を明示していない土地はトラブルに巻き込まれる恐れがあるだけにとどまらず、購入に当たって買い手が住宅ローンを利用できない可能性もあります。「筆界」を明示しないまま売却を進めようとしているのは、何らかの不都合な事情を抱えているからではないかと金融機関側が推察し、担保として十分に評価してもらえない恐れがあるのです。

さらに、長らく「筆界」を確認せず、先に触れた「所有権界」上に塀などによる仕切りが設けられた状態が続くと、本来、自分の土地であったにもかかわらず、所有権を失ってしまうケースも出てきます。実際の所有者でなくても、長期間にわたって占有していることで所有者になれるという「時効取得」が適用される可能性が考えられ、それを防ぐうえでも「筆界確定」は重要だと言えます。

「境界標」が見当たらない場合はどうすべき? 境界の確認方法 

不動産売却においては、それぞれのステップごとに注意点が存在しています。売却に踏み切る前の段階で最も重要なポイントとなってくるのは、仲介を依頼する不動産会社の選択で、詳しくは後述しますが、物件の査定は1社だけに絞らず、複数に依頼するのがセオリーだと言えます。

そして、売り出し期間中は内覧希望者への対応が求められることにも留意しておきましょう。内覧は土・日曜日が多いものの、平日を希望するケースもあるので、急な依頼にも対応できるように、室内外を整備しておく必要があります。

正式な土地の境界線である「筆界」は、現地に「境界標」と呼ばれる杭が打たれていれば、それをもとに確認できます。「境界標」とは、みかげ石やコンクリート、金属、プラスチックなどの材質でできた杭で、その頭部には十字や矢印が描かれ、それらが「筆界」の位置を示しています。

「境界標」が見当たらない場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)や地積測量図で確認するか、土地家屋調査士に依頼するといった方法が考えられます。登記事項証明書(登記簿謄本)や地積測量図は法務局が管理しており、インターネット上でも取得できるので、最も手軽な方法だと言えるでしょう。

登記事項証明書には、土地の所有者や抵当権、所在、地番、地目、土地の面積が記載されています。地積測量図も存在していれば、土地の寸法や位置関係、面積の算定根拠なども確認できます。

ただ、相応の知識がないと内容をきちんと理解するのが難しいのも確かで、そういった場合は土地家屋調査士に調べてもらうのがベストでしょう。国家資格を取得した「筆界」の専門家で、土地や家屋に関する調査、測量、登記申請手続きの代行などを手掛けています。

測量士に依頼して調べてもらう人もいるようですが、その場合は二度手間になってしまう恐れがあります。測量士はその名称の通り、測量のプロフェッショナルですが、「筆界」にも精通しているわけではありません。

測量士が作成した図面をもとに隣地の所有者と境界線に関して合意が得られたとしても、それはあくまで「所有権界」に関する取り決めにすぎません。売却などで「筆界」を判明させる必要が生じた場合は、改めて土地家屋調査士に依頼することになります。

現地で測量が必要になるケースとは?

先程も述べたように、「境界標」が見当たらなかったり、隣地との境界線を判断する目安がなかったりする場合は、土地家屋調査士にきちんと現地を測量してもらって「筆界」を確定させるのが賢明です。また、塀などで仕切られていて目安がつく場合も、それは「所有権界」で「筆界」とは異なる可能性も考えられますから、測量を行うのがベターだと言えるでしょう。

特に地価が高いエリアにある土地は、わずかな面積の誤差が評価額に大きな違いをもたらしかねません。相続税を現金で支払えなくて遺された土地で物納する場合も、その正確な評価のために測量と「筆界」の確定が必要となります。

土地を担保に融資を受け、抵当権が設定される場合も然りです。担保に充てる土地の評価を行うために測量が求められます。

もちろん、「筆界」が判明している土地については、当然ながら測量が不要です。加えて、地価が非常に安い土地や、あまりにも広大な土地については、その評価額よりも測量費用のほうが高くつくケースもあり、そういった場合は実施しないという選択肢も浮上してくるでしょう。

境界確定測量の方法とその費用

ここでは、境界(筆界)を確定させるために実施する測量の手順について説明しましょう。まず、「筆界確定」のための測量を土地家屋調査士に依頼し、面談を通じてその具体的な内容について詳しく伝えたうえで、見積もりを作成してもらいます。

次に、道路に面した「筆界」の確認を行う場合は、市区町村に調査の申請を出します。民有地との「筆界」の場合は隣地の所有者にその旨を伝え、測量時の立ち会いを依頼します。

測量を開始します。並行して土地に関連する図面を収集し、情報を照合していきます。その土地に昔から住んでいる人が古い図面を持っているケースもあり、そういった図面も借用して調査に使います。

なお、道路との「筆界」においては、市区町村の担当職員が立ち会うことになります。その後、判明した「筆界」に関する書面を市区町村の担当部署に提出します。

立ち会ったすべての人が測量結果に同意すると、境界確認書を取り交わすことになります。そして、判明した「筆界」に沿って「境界標」が設置されます。

それまで認識していた隣地との境界が新たに明らかになった「筆界」と一致しない場合は、新たにその登記を申請するのが賢明です。おのずと所有地の面積も違ってくることになり、固定資産税を計算する際の評価額にも影響が及びます。

登記手続きは土地の所有者自らが行うことも可能ではあるものの、地積測量図の作成などといった専門的な作業が発生するため、土地家屋調査士に代行してもらうのが無難です。これらの手順をすべて経ると、「筆界」の確定とその登記が完了します。

「筆界」を確定させるための測量に要する費用は、35万円~80万円程度が相場だと言われ、土地の広さによっても変わってきます。 国や都道府県、市町村などが所有する官有地と接している場合は、60~80万円程度とさらに相場が高めになります。

測量の所要日数については、立ち会いを求められる個々の関係者とのスケジュユール調整も求められるため、まさにケースバイケースとなってきますが、少なくとも2〜3カ月程度はかかると思っておいたほうが無難です。その後の登記手続きは、通常なら申請から10日程度で完了します。

まとめ

「筆界」とは、土地が登記された時点においてその範囲を区画するものとして定められたもので、自分の所有地と隣地との正式な境目(境界線)を意味しています。土地の売買契約を結ぶ際には、売り手が買い手に対して「筆界」がどこであるのかについて明らかにする「筆界明示義務」を果たす必要があります。

法律で定められた義務ではなく、「筆界」が不明でも土地の売買自体は可能ですが、ほとんどの土地売買契約では条項の一つに「境界設置や立会い承諾書の取得」が掲げられています。なぜなら、「筆界」が不明確な状態で売買を進めると、隣地の所有者などとの間でトラブルが生じる可能性があるからです。

「筆界」の明示を巡っては、現地の測量が必要となってくるケースも少なくありません。ニフティ不動産の「住まい探しコラム」では、「筆界明示義務」や不動産売却に関する豊富なコンテンツを用意していますので、ぜひ参考にしてください。

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