マンションの売却に必ず関わってくる「敷地権」についてわかりやすく解説!


「敷地権」とは? 「敷地利用権」や「所有権」とは何が違う?

マンションの売却に必ず関わってくる「敷地権」についてわかりやすく解説!

分譲マンションのような共同住宅は一つの建物の中に区分された居室が複数設けられており、それぞれの所有者が異なっているのが通常です。こうして複数の所有者が存在する建物のことを「区分建物」、個々に区分された居室を所有している権利のことを「区分所有権」と呼んでいます。

個々の入居者が「区分所有権」を有している居室が「専有部分」であるのに対し、共同で使用するエントランスやエレベーター、廊下などは「共用部分」に該当し、全入居者が共有しています。そのマンションが建っている敷地も全入居者が共有しており、「専有部分」の面積に応じた個々の持ち分を「敷地利用権」と呼んでいます。

つまり、「敷地利用権」はマンションの「専有部分」に居住するために必要とされる土地を利用できる権利のことです。一戸建ての場合は、土地と建物を所有する権利を別々に登記しており、それぞれを分離して売却することも可能です。

これに対し、マンションのような「区分所有建物」は「区分所有権(専有部分)」と「敷地利用権」を個別に処分することができません。こうして建物部分の所有権と「敷地利用権」を分離できないような一体化させたものが「敷地権」です。

非常によく似ている言葉ではあるものの、「敷地利用権」と「敷地権」とは違うものだということです。先述したように「区分所有建物」における「区分所有権(専有部分)」と「敷地利用権」が一体化されたものが「敷地権」なので、「所有権」とも意味合いが異なっています。

「所有権」とは、土地や建物の所有者としてそれらを売却したり、他人に貸し出して収益(賃料)を徴収したりすることが可能な権利のこと。「所有権」は純粋に所有を意味する権利で、分離売却できるか否かについては定義していません。

「敷地権」が制定されたのは1983年で、それよりも以前に販売された「区分所有建物」では土地と建物を別々に売却することが可能でした。しかし、建物のみ、もしくは土地のみを売却する相次ぎ、登記簿謄本の書き換えが頻繁に行われた結果、記載上のミスが問題化し、「敷地権」という権利形態が定められました。

このように、法律上の解釈において「敷地権」と「所有権」は異なっているものです。しかしながら、区分所有のマンションを売却する際には、「敷地権」という言葉が「所有権」とほぼ同じような意味合いで用いられています。

区分所有分に相当する「敷地権」の割合はどうやって決まる?

「敷地権割合」とは、自分が区分所有している分に相当する「敷地権」の割合のことです。「自分の専有部分の面積÷そのマンションにすべての専有部分の面積の総計」という計算式で算出します。

通常ですと、計算の際には「壁芯面積」が用いられます。「壁芯面積」とは、壁や柱の厚みの中心線から測定した面積のことです。

建築基準法において床面積とは、「壁芯面積」のことを指しています。そのため、分譲マンションのパンフレットに記載されている販売面積も「壁芯面積」になっています。

「壁芯面積」に対し、壁の内側の部分で測定したのが「内法面積」で、こちらは登記簿に記載する際に用いられています。おのずと「壁芯面積」よりも小さくなりますが、実際に使用(専有)できる部分と同等の広さを示しています。

総戸数10戸のマンションで、すべての居室の専有面積が60平方メートルだったケースについて、「敷地権割合」を計算してみましょう。この場合、そのマンションにすべての専有部分の面積の総計は「60平方メートル×10戸=600平方メートル」になります。

先程の計算式に当てはめると「60平方メートル÷600平方メートル=0.1」になり、「敷地権割合」が10分の1であることが判明します。なお、「敷地権割合」は登記事項証明書に記載されています。

「敷地権」を登記するメリット・デメリット、登記の方法

不動産登記法では、分譲マンションのような区分建物が建つ土地に対し、「敷地権である旨の登記」を記載することが定められています。その記載が行われることによって、「区分所有権」と「敷地利用権」が一体化されることになるのです。

一体化されることで、登記や売買を巡ってトラブルが発生するリスクが抑えられます。「敷地権」が制定される前のように、「区分所有権」と「敷地利用権」どちらかだけの権利が移転してややこしくなる恐れもなく、登記の手続きも複雑化しません。

また、ローンを組んで中古の分譲マンションを購入する際にも、きちんと「敷地権」が登記されていることは好材料となりそうです。金融機関側としても、「敷地権」の登記が行われている状態のほうが融資に応じやすいと言えるでしょう。

では、「敷地権」を登記すると、何らかのデメリットが発生するのでしょうか? 登記上のミスやトラブルの回避を念頭に定められたという背景もあり、先述したようなメリットは挙げられますが、特にデメリットは見当たりません。

新築マンションの場合、「敷地権」の登記は最初の取得者(不動産販売会社)が引渡日から1カ月以内に、管轄の登記所で申請を行います。中古の分譲マンションを購入した場合は、区分所有者となった人が「敷地権」の生じた日から1カ月以内に申請を行う必要があります。

「敷地権」として一体化されていることから、「区分所有」の登記を済ませれば登記官の職権によって「敷地利用権」も移転されるので、別々の手続きは不要です。

「敷地権」にはどのような税金がかかる?

分譲マンションを区分所有している場合も、「敷地権割合」に応じて固定資産税が課されます。固定資産税の計算式は「課税標準額×税率(1.4%)」です。

「課税標準額」とは、「敷地権」の評価額に住宅用地の特例を適用して係数を乗じたもの。「敷地権」の評価額は、「マンション敷地全体の評価額×敷地権割合」の式で算出します。

住宅用地の特例とは、「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」のいずれかに該当する場合に適用されるものです。「小規模住宅用地」は住宅用地で住宅1戸につき200平方メートルまでの部分、「一般住宅用地」は住宅用地で住宅1戸につき200平方メートルを超え、家屋の床面積の10倍までの部分を意味します。

「小規模住宅用地」に該当する場合の係数は1/6、「一般住宅用地」に該当する場合の係数は1/3で、これらを乗じて「課税標準額」を算出します。

また、都市計画区域内にある土地の場合は都市計画税も課され、0.3%が基本税率となっていますが、自治体によって違いがあります。

固定資産税評価額や課税標準額、税額は、区分所有者宛てに郵送される納税通知書に記載されています。通知書において「宅地」と記載されているものが「敷地権」の固定資産税です。

相続税の計算を行う際にも、やはり「敷地権」が関わってきます。その評価額は、「マンション敷地全体の評価額×敷地権割合」という式で算出します。

マンション敷地全体の評価額は、路線価が定められている地域の場合は「路線価方式」、評価倍率が定められた地域の場合は「倍率方式」で評価します。「路線価方式」では「路線価×補正率×地積(土地面積)×敷地権の割合」、「倍率方式」では「固定資産税評価額×倍率」という計算式を用います。

まとめ

分譲マンションにおいて居室(専有部分)の持ち主であることを意味するのが「区分所有権」であるのに対し、「専有部分」に居住するために必要とされる土地(敷地)を利用できる権利が「敷地利用権」です。マンションのような「区分所有建物」では、「区分所有権(専有部分)」と「敷地利用権」を個別に処分することができません。

建物部分の所有権と「敷地利用権」を分離できないような一体化させたものが「敷地権」です。登記上のミスやトラブルを防ぐなど、「敷地権」の登記には様々なメリットがあります。

しかも、先々でマンションを売却する際には必ず関わってくる言葉ですから、きちんと理解しておいて損はないでしょう。ニフティ不動産の「住まい探しコラム」では「敷地権」をはじめ、不動産の購入・売却に関連する多数の専門用語を解説しています。

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