
そこで本記事では、不動産の売却時にかかる税金の種類についてわかりやすく解説します。節税に利用できる特例も紹介しているため、少しでもお得に不動産を売却したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産売却時にかかる税金の種類

所有している不動産の売却や、相続した不動産の売却時には、印紙税と登録免許税、譲渡所得税がかかります。それぞれ支払うタイミングが異なるため、以下の表で確認しておきましょう。
種類 | 概要 | 支払うタイミング | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
印紙税 | 売買契約書に課税される税金 | 売買契約の締結時 | |||||||||||||||
登録免許税 | 所有権の移転にかかる税金 | 不動産の引き渡し時 | |||||||||||||||
譲渡所得税 | 不動産の売却によって発生した所得に課税される税金 | 所得税:確定申告時 住民税:売却した翌年の6月以降 |
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書に課税される税金です。印紙を購入して売買契約書に貼り付ける必要があり、支払うタイミングは売買契約の締結時となります。
発生する印紙税額は、不動産の売却価格によって異なります。以下の表で印紙税額をまとめているため、自分の不動産を売却する際にかかる印紙税額を確認してみましょう。なお、令和6年3月31日までに作成される契約書のうち、契約金額が10万円を超えるものは軽減措置の対象で税額が低くなります。
記載された契約金額 | 通常の税額 | 軽減税率適用の税額 | |||||||||||||||
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1万円未満 | 非課税 | ― | |||||||||||||||
1万円以上10万円以下 | 200円 | ― | |||||||||||||||
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 | |||||||||||||||
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 | |||||||||||||||
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 | |||||||||||||||
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 | |||||||||||||||
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 | |||||||||||||||
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 | |||||||||||||||
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 | |||||||||||||||
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 | |||||||||||||||
10億円を超え50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 | |||||||||||||||
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
参照1:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
参照2:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
たとえば、令和5年に600万円で不動産を売却する場合、軽減税率が適用されて印紙税は5,000円となります。また、令和6年4月以降に3,000万円の不動産を売却する場合の印紙税は20,000円です。
また、2022年5月以降、不動産売買契約は電子契約で締結することが可能になりました。そのため、電子契約で売買をおこなう場合は、上記の印紙税は一切かかりません。
登録免許税
登録免許税とは、所有権の移転にかかる税金です。不動産の引き渡しと同時に登記申請をおこなう必要があり、登記申請書に収入印紙を貼り付けて納めます。
登録免許税の金額は、土地や建物の売却価格によって異なります。以下の表で登録免許額をまとめているため、自分の不動産を売却する際にかかる登録免許税を確認してみましょう。なお、令和5年3月31日までに土地の登記を変更する場合は軽減措置の対象となり、税率が15/1,000になります。令和6年3月31日までに住宅用の建物の登記を変更する場合も軽減措置の対象であり、税率が3/1,000になります。
通常の税率 | 軽減税率適用の税率 | ||||||||||||||||
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土地の売買 | 20/1,000 | 15/1,000 | |||||||||||||||
建物の売買 | 20/1,000 | 3/1,000 |
たとえば、令和5年4月以降に1,000万円の土地を売却する場合、20万円の登録免許税がかかります。また、令和5年に3,000万円の住宅用の建物を売却する場合、軽減税率が適用されて登録免許税は9万円です。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産の売却によって発生した所得に課税される税金で、所得税と住民税を合算したものです。所得税は確定申告時に納付し、住民税は売却した翌年の6月以降に納付します。
譲渡所得税の金額は、下記の計算式で算出した「課税譲渡所得額」に、不動産の所有年数に応じて定められた税率を掛けて算出します。
課税譲渡所得額の計算式
収入金額 | 不動産の売却時に買主から受け取る金額。金銭ではなく、物や権利を受け取った場合には、その物や権利の時価となる。 | ||||||||||
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取得費 | 家の買い替えなどで、不動産を購入した際にかかった金額。購入代金に加えて、購入手数料や設備費・改良費も含まれる。 | ||||||||||
譲渡費用 | 不動産を売却するために直接かかった金額。仲介手数料や売主の負担した印紙税・立退料などが挙げられる。 | ||||||||||
特別控除額 | 一定の要件を満たす場合に控除される金額。収用等により不動産を譲渡した場合や居住用の建物を売却した場合などが挙げられる。 |
譲渡所得税の税率は、下記のように定められています。
長期譲渡所得(5年を超える年数の所有) | 税率22.1%(所得税15%、復興特別所得税2.1%、住民税5%) | ||||||||||
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短期譲渡所得(5年以下の年数の所有) | 税率41.1%(所得税30%、復興特別所得税2.1%、住民税9%) |
参照:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
譲渡所得税の税率は、不動産の所有年数によって異なります。不動産の所有年数が5年を超えている場合、短期で所有している場合よりも19.3%も税率が低くなっています。
譲渡所得税の計算シミュレーション

譲渡所得税は、印紙税や登録免許税よりも計算が複雑であるため、計算シミュレーションを通して計算方法を理解しておきましょう。
【条件】
10年所有した不動産を4,000万円で売却した場合のシミュレーションをおこないます。そのほかの条件は、以下の通りです。
- ・収入金額:4,000万円(建物1,000万円、土地3,000万円)
- ・取得費:2,000万円(建物1,000万円、土地1,000万円)
- ・譲渡費用:100万円
- ・控除費用:なし
- ・所得年数:10年
【計算式】
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得額
上記の計算式に当てはめると、以下のようになります。
4,000万円-(2,000万円+100万円)-0=1,900万円
譲渡所得税の税率は22.1%が適用されるため、譲渡所得税は419万円です。
不動産売却時の節税に利用できる特例

不動産売却時に適用要件を満たすと、3,000万円特別控除や譲渡所得税の軽減措置を受けられます。3,000万円特別控除とは、マイホームを売却した際に3,000万円の控除を受けられる制度です。また、譲渡所得税の軽減措置とは、課税譲渡所得金額の6,000万円以下の部分に関して税率が10%になる制度です。
節税してお得に売却するために、どのような条件で適用されるのか把握しておきましょう。なお、3,000万円特別控除とマイホームを売ったときの軽減税率の特例は、併用して受けられます。
3,000万円特別控除
3,000万円特別控除とは、所有期間の長さに関係なく、居住用の財産を売却した場合に最高3,000万円までの控除を受けられる制度です。制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- ・住んでいる家屋を売却する、または家屋とともに敷地や借地権を売却する
- ・売却した年の前年と前々年に3,000万円特別控除やマイホームの買い替えなどの特例の適用を受けていない
- ・災害によって滅失した家屋の場合、敷地に住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売却する
- ・売主と買主が親子や夫婦など特別な関係ではない
【例】
10年所有したマイホームを6,000万円で売却した場合の譲渡所得税を計算します。そのほかの条件は、以下の通りです。
- ・収入金額:6,000万円(建物1,000万円、土地5,000万円)
- ・取得費:2,000万円(建物1,000万円、土地1,000万円)
- ・譲渡費用:100万円
- ・控除費用:3,000万円
- ・所得年数:10年
収入金額6,000万円から取得費の2,000万円と譲渡費用100万円、控除費用3,000万円を差し引くと、課税譲渡所得金額は900万円です。譲渡所得税の税率は22.1%が適用されて、譲渡所得税は199万円となります。
参照:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
マイホーム売却時の軽減税率
マイホーム売却時の軽減税率(10年超所有軽減税率)とは、長期譲渡所得の税額が通常の場合よりも低い税率で計算される制度です。課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下の部分には税率14.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%)が適用されて、6,000万円を超える部分には税率20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)が適用されます。制度を利用するために必要な条件は、以下の通りです。
- ・日本国内にある自分が居住している家屋を売却する、または家屋とともに敷地を売却する
- ・売却した年の1月1日時点で家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えている
- ・売却した年の前年と前々年にマイホーム売却時の軽減税率の特例やほかの特例(3,000万円特別控除を除く)の適用などを受けていない
- ・売主と買主が親子や夫婦など特別な関係ではない
以下、適用した場合の例を紹介します。
【例】
15年居住したマイホームを8,000万円で売却した場合の譲渡所得税を計算します。そのほかの条件は、以下の通りです。
- ・収入金額:8,000万円(建物2,000万円、土地6,000万円)
- ・取得費:4,000万円(建物2,000万円、土地2,000万円)
- ・譲渡費用:100万円
- ・控除費用:なし
- ・所得年数:15年
収入金額8,000万円から取得費の4,000万円と譲渡費用100万円を差し引くと、課税譲渡所得金額は3,900万円です。譲渡所得税の税率は14.21%が適用されて、譲渡所得税は554万円となります。
参照:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
不動産売却益(譲渡所得)が出たら確定申告が必要

不動産を売却して所得(利益)が生じたら、譲渡所得税を納付しなければならないため、確定申告が必要となります。確定申告のタイミングで困らないためにも、必要書類や流れを理解しておきましょう。
不動産売却後の確定申告の必要書類
不動産売却後の確定申告に必要な書類を以下の表でまとめました。
書類 | 概要 | 入手方法 | |||||||||||||||
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確定申告書B様式(第一表) | 申告する内容を記載する書類 |
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確定申告第三表(分離課税用) | 不動産の所得を記載する書類 |
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譲渡所得の内訳書 | 売却した不動産の所在地や購入金額、売却金額などを記載する書類 |
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取得時の売買契約書のコピー | 不動産を購入した際に作成した売買契約書のコピー | 売買契約書を印刷する | |||||||||||||||
取得費用のわかる領収書のコピー | 不動産を取得した際の仲介手数料や登記費用などがわかる領収書のコピー | 領収書を印刷する | |||||||||||||||
売却時の売買契約書のコピー | 不動産を売却する際に作成した売買契約書のコピー | 売買契約書を印刷する | |||||||||||||||
売却時の取得費用のわかるコピー | 不動産を売却する際にかかった仲介手数料や登記費用などがわかる領収書のコピー | 領収書を印刷する | |||||||||||||||
登記事項証明書 | 不動産の所有者や担保に関する情報などが記載された書類 | 法務局に申請する | |||||||||||||||
本人確認書類 | 身分を証明するために必要な書類 | 住民票の写しや運転免許証などを印刷する | |||||||||||||||
源泉徴収票 | 1年間の収入や納付した所得税額などが記載された書類 | 勤務先で交付される |
不動産の取得時の売買契約書を紛失している場合、売主や仲介業者に連絡して再発行してもらいましょう。再発行してもらう場合は、内容を確認してもらったうえで署名・捺印してもらう必要があります。また、売主や仲介業者から売買契約書のコピーをもらうのもひとつの手です。
不動産売却後の確定申告の流れ
不動産売却後の確定申告の流れは、以下の通りです。
- 1.利用する特例を確認する
- 2.譲渡所得税額を計算する
- 3.必要書類を用意する
- 4.確定申告書を作成する
- 5.確定申告書を提出する
譲渡所得税額は利用する特例によって変動するため、最初にどの特例を利用するのか検討します。利用する特例を決めて譲渡所得税額を計算できたら、必要な書類を用意しましょう。必要な書類が揃ったら、確定申告書を手書きまたはオンラインで作成していきます。確定申告書が完成したら、税務署に郵送や持ち込みで提出する、またはe-Taxで提出して完了です。
まとめ
不動産売却には、印紙税や登録免許税、譲渡所得税などの税金が発生します。その中でも、譲渡所得税は不動産の譲渡所得額によって数百万円にも及ぶ場合があるため、節税できる特例の利用がおすすめです。
本記事では、不動産の売却時に利用できる制度として、3,000万円特別控除とマイホーム売却時の軽減税率を紹介しました。利用条件を満たしている場合は併用できるため、ご自身が利用条件を満たしているか確定申告前に確認しておきましょう。
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