共有名義の不動産は売却できる?売却方法やよくあるトラブルを解説

この記事では、共有名義の不動産を売却できるのか、共有名義の不動産の売却方法、売却するまでの流れ、必要な書類などを解説します。共有名義の不動産売却について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。



共有名義の不動産は売却できる?

共有名義の不動産は売却できる?売却方法やよくあるトラブルを解説

共有名義とは、複数人で不動産を所有している状態です。家の所有者が誰なのかは、登記を見ればわかります。家の名義が1人の状態を単独名義、複数人の状態を共有名義と呼びます。家を相続した、夫婦で家を購入した際には、単独名義ではなく共有名義になることがあります。

結論からいうと、共有名義の不動産であっても売却することは可能です。ただし、条件によっては売却方法が異なるので注意が必要です。

共有名義の不動産の売却方法

共有名義の不動産は売却できる?売却方法やよくあるトラブルを解説

共有名義の不動産の売却方法として、以下の5つが挙げられます。

メリット デメリット
共有者全員の同意を得て売却する 高く売却できる 同意を得られるとは限らない
自分の持分だけを売却する 持分を現金化できる 相場よりも価格が安くなりやすい
共有者に持分を買い取ってもらう 持分を現金化できる 同意を得られるとは限らない
分筆する 高く売却できる 土地の場合しか選択できない
リースバックする 同意を得られやすい 相場よりも価格が安くなりやすい
 

状況によって最適な売却方法が違うため、各売却方法の違いをしっかり把握しておきましょう。

共有者全員の同意を得て不動産を売却する

共有名義の不動産全体を売却しようとする際は、共有者全員の同意を得なくてはなりません。家に誰も住んでおらず、売却に前向きな場合は、共有名義の不動産全体をそのまま売却できるので最も高く売却できるでしょう。

しかし、1人でも反対する共有者がいた場合は、不動産を売却できないので注意してください。

全員の同意を得ることができた場合は不動産売却に進みます。買主と契約を締結する際は、共有者全員が立ち会う、立ち会えない場合は委任状を作成しておく必要があります。共有者の中から代表者を決めておけば、売却をスムーズに進められるでしょう。

自分の持分だけを売却する

共有名義の不動産では、自分の持分だけを売却することも可能です。そのため、共有者全員の同意を得られない場合も自分の持分だけであれば現金化することが可能です。

しかし、一般的な買主は、持分を購入したところで不動産を単独で使用できるわけではないので持分を購入したいとは思いません。自分の持分だけを売却する際は持分の買取を専門とする不動産会社に相談することになり、買取価格が実際の評価額よりも安くなる点に注意してください。

また、他の共有者に黙って自分の持分を売却した場合、後でトラブルに発展する可能性があるため、あらかじめ自分の持分を売却することを伝えておきましょう。

共有者に自分の持分を買い取ってもらう

自分の持分を売却する際は、他の共有者に買い取ってもらうことも可能です。共有者に買い取ってもらえれば、共有者全員の同意が得られない場合でも、自分の持分を現金化できるでしょう。

しかし、必ずしも共有者が持分を買い取ってくれるとは限りません。他の共有者が家の取得を希望していて、持分を買い取ることによって単独名義になるようなケースでは、買取に応じてくれる可能性が高いです。

共有者に自分の持分を買い取ってもらう際、売却益が発生すると譲渡所得税、評価額よりも安く売却すると贈与税が課されるので注意してください。

分筆する

分筆とは、持分に応じて不動産を分割することです。例えば、相続したのが100坪の土地で、共有者が2人の場合は50坪ずつに分割するのが分筆です。分筆できれば、一般的な不動産として売却できるので高く売却できるでしょう。

しかし、必ず分筆できるとは限りません。家が建っている場合は分筆ができない、狭い土地の場合は分筆することによって利便性が下がるので価値が下がる可能性があります。

分筆すべきかどうかの判断は容易ではないため、分筆を担当する土地家屋調査士に相談することをおすすめします。

リースバックする

リースバックとは、売買契約と賃貸借契約を締結することで、売却後の不動産に住み続けられる契約形態です。通常の不動産売却では、買主は自身が居住するための住宅を探しているので、売却後の住宅に住み続けることはできません。しかし、リースバックであれば、家賃を支払う必要はあるものの、住み続けることが可能です。

共有者の中には、自身が共有名義の不動産に住んでいて手放したくないという理由で売却に同意しないというケースも多いです。リースバックであれば、住み続けられるので同意を得られる可能性が高いでしょう。

しかし、リースバックの買取価格は、相場の7~8割程度といわれています。買取価格が相場よりも安くなる点に注意が必要です。

共有名義の不動産を売却するまでの流れ

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共有名義の不動産を速やかに売却するためには、事前にどのような流れで売却を進めるのかを事前に把握しておくことが大切です。共有名義の土地を売却する場合の流れは、以下の通りです。

  • 1.共有者を確認する
  • 2.費用を負担する割合を決める
  • 3.売却価格を決める
  • 4.土地を売却する
  • 5.確定申告
 

それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。

1.共有者を確認する

共有名義の不動産を売却する際は、共有者全員の同意を得なくてはなりません。そのため、まずは共有者が誰なのかを把握する必要があります。

共有者が全員揃っていない状況で不動産売却を進めると、売却手続きがやり直しになる可能性があります。法務局で登記事項証明書を確認すれば、誰が共有者なのかがわかるので、必ず確認しましょう。

2.費用を負担する割合を決める

共有者を確認した後は、共有名義の不動産を売却する際にかかる費用を負担する割合を話し合います。共有名義の不動産を売却する際は、以下のような費用がかかります。

  • ・仲介手数料
  • ・測量費
  • ・登録免許税(抵当権抹消費用)
  • ・司法書士報酬
  • ・印紙税
 

上記の費用を誰がどのように負担するのかを話し合わないまま各共有者に請求した場合、トラブルに発展する可能性があります。

費用負担について事前に話し合っておくだけでなく、公平性の観点から共有者の持分割合に応じて費用の負担割合を決めると良いでしょう。

3.売却価格を決める

費用の負担割合について決めた後は、売却価格を決めます。売却価格を話し合わずに売りに出した場合、売却価格が他の想定よりも安く、売却後にトラブルに発展する可能性があります。

トラブルを回避するためには、共有者全員で売却価格をいくらにするのかを事前に話し合っておくことが大切です。また、購入希望者から値下げ交渉があった場合やなかなか買主が見つからない場合の値下げを想定して、最低売出価格を事前に決めておけば、トラブルを回避できるだけでなく、話し合いの手間を省けるでしょう。

4.土地を売却する

最低売却価格を決めた後は、いよいよ土地の売却に移行します。土地を売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果や実績、担当者との相性などを踏まえながら仲介を依頼する不動産会社を決定します。

不動産会社に仲介を依頼した後の流れは、以下の通りです。

  • 1.売却活動に取り掛かる
  • 2.購入希望者が現れた場合は内覧をする
  • 3.重要事項説明・売買契約の締結
  • 4.代金決済・物件の引き渡し
 

共有名義の土地の場合、売買契約締結時には基本的に共有者全員が立ち会う必要があります。しかし、立ち会いが困難な場合、委任状を提出することで対応できます。

5.確定申告

土地を売却した後は、確定申告に進みます。確定申告とは、土地の売却によって利益が発生した場合、利益に対して課される税金の申告・納税手続きのことです。

土地の共有者全員が個別に確定申告をします。利益が出ていない場合は確定申告をする必要はありません。しかし、控除や特例を利用する場合や利益が出ている場合は確定申告が必要なので注意してください。

確定申告は土地を売却した年の翌年2月16日~3月15日となっています。確定申告を忘れた場合、ペナルティを受ける可能性があるので、忘れずに確定申告を済ませましょう。

共有名義の不動産売却に必要な書類

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共有名義の不動産を売却する際は、以下のような書類が必要です。

書類 概要 入手先
登記済権利証・登記識別情報 不動産の名義人が誰なのかを証明する書類
土地測量図・境界確認書 土地の境界線や面積を明確にする書類 法務局
固定資産税納税通知書 固定資産税の納税額を確認するために必要な書類
身分証明書 本人確認のために使用する書類(例:免許証)
実印・印鑑証明書 使用した印鑑が実印であることを証明する書類 市区町村の窓口
住民票 登記上の住所と現住所が異なる場合に使用する書類 市区町村の窓口
 

登記済権利証や登記識別情報は、不動産を取得したタイミングで1度だけ発行される書類なので再発行できません。また、境界確認書も、土地家屋調査士に依頼した際に1度だけ発行される書類で再発行できません。書類を紛失して悩んでいる方は不動産会社に相談しましょう。

固定資産税納税通知書は1月1日時点の不動産の所有者に対し、4~6月頃に送付されます。紛失した場合は、市区町村の窓口で固定資産税評価証明書を発行してもらうことで代用可能です。

市区町村の窓口や法務局で書類を発行する際は、1枚あたり数百円の手数料がかかるので用意しておきましょう。

共有名義の不動産売却でよくあるトラブルと対処法

共有名義の不動産は売却できる?売却方法やよくあるトラブルを解説

共有名義の不動産は一般的な不動産とは扱いが異なります。トラブルも生じやすいため、どのようなトラブルが生じるか、どのように対処すればいいかを事前に把握しておくことが大切です。よくあるトラブルは以下の通りです。

【共有名義の不動産売却でよくあるトラブル】
  • ・売却や買取の交渉によるトラブル
  • ・家賃や税金に関するトラブル
  • ・購入者が不動産敷地内に入ってくる
  • ・共有物分割請求をされる
  • ・勝手に共有持分を売却される
 

それぞれのトラブルと対処法について詳しく解説していきます。

売却や買取の交渉によるトラブル

共有名義の不動産を売却する際は、共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうという方法が挙げられます。いずれの場合も他の共有者と売却・買取の交渉をする必要がありますが、交渉がうまくいかない場合、共有者との関係が悪化する可能性があります。

共有者との関係が悪化した場合、交渉の余地がなくなってしまうでしょう。関係を悪化させないためには、強引に交渉を進めるのではなく、弁護士などの専門家に依頼して交渉をサポートしてもらいましょう。

家賃や税金に関するトラブル

共有名義の家を貸し出していた場合には、家賃や税金に関するトラブルが発生する可能性があります。例えば、家賃が平等に支払われていなかった、税金の負担が平等になっていなかったなどです。最悪の場合には、共有者同士で訴訟に発展する可能性があるので注意してください。

トラブルを回避するには、家賃の支払いや税金の負担に関するルールを設けておくことが大切です。持分割合に基づいて家賃の支払いや税金の負担割合を決めておけば、公平性が高くトラブルを回避できるでしょう。

購入者が不動産敷地内に入ってくる

共有者の1人が第三者に自分の持分を売却した場合、第三者が共有者として不動産を使用する権利を取得します。そのため、購入者が不動産敷地内に入ってくることで、何らかのトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。

トラブルを回避するには、自分の持分を他の共有者に黙って売却するのではなく、売却することを事前に伝えておくことをおすすめします。事前に伝えておけば、どのようなトラブルが生じる可能性があるか想定できるほか、持分を他の共有者が買い取るという選択も可能になることでトラブルを回避できるでしょう。

共有物分割請求をされる

共有物分割請求とは、裁判を経て不動産の共有状態を解消することです。共有物分割請求は共有者であれば誰でも裁判所に訴訟を提起できます。裁判所の裁定の結果には法的拘束力があり、最悪の場合は望んでいない分割方法が選択される可能性があるので注意が必要です。

共有状態のまま放置していると、いきなり共有物分割請求訴訟を提起されて、裁判所の裁定がくだる可能性があるので共有状態のまま放置しない、共有者同士でしっかり話し合いましょう。

勝手に共有持分を売却される

各共有者は自分の持分だけであれば、他の共有者の同意を得ることなく売却することが可能です。勝手に共有持分を売却された場合、第三者が共有者として加わるため、不動産の意思決定がさらに困難になる可能性があります。

最悪の場合は、自分に有利な条件でなければ合意をしないといったようなトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。

トラブルを回避するためには、購入者が不動産敷地内に入ってくるトラブルと同様に、自分の持分を他の共有者に黙って売却するのではなく、売却することを事前に伝えておくことをおすすめします。事前に伝えておけば、トラブルを回避できる可能性が高まるでしょう。

まとめ

共有名義の不動産は、単独名義の不動産とは異なり、自由に売却できません。不動産全体を売却するためには、共有者全員の同意が必要といったように、一部制限が加わるので注意が必要です。

自分の持分だけを売却する場合は、他の共有者の同意を得る必要はありませんが、評価額よりも買取価格が安い点に注意が必要です。

共有名義の不動産の売却方法にはいくつか選択肢がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。選択してから後悔しないためにも、各選択肢の特徴をしっかり理解してから選択しましょう。

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